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ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪 シーズン1のaradkのレビュー・感想・評価

3.9
映画三部作が素晴らしかっただけに、ドラマ版への不安も大きかったのだが、しっかりとした美術や落ち着いた話運びで安心して見ることができた。

5シーズンで完結の予定らしく、まだまだ序盤の本シーズンはキャラクター配置、舞台説明的な部分もあり、物語的なカタルシスはない。しかしながらシーズンファイナルではとあるキャラクターの登場もあり、ツボは押さえている感じ。

ヌーメノールの街が素晴らしかった。映画版で描かれた様々な都市の雰囲気を意識しつつも新たな街が作り上げられている。この街はどうやら沈むっぽいのだけど、どの様なカタストロフが描かれるのか楽しみだ。

また、カサド=ドゥームも映画版のモリア坑道に名残がある様にデザインされていて、グッとくるものがあった。枯葉が燃えちゃう場面のアレとかも楽しみ。

あと役者さんでは、ガラドリエル役のモーフィッド・クラークが良かった!ケイト・ブランシェットの個性ツヨツヨのガラドリエルの若き頃を、ルックも含め違和感なく、新たな魅力を備えて演じている。よくこういう役者さんを見つけてくるもんだ。

ケイトのガラドリエルより喧嘩っ早い感じで、魔法のマの字も無いのだけど、映画版のちょっと恐ろしさも兼ね備えた人物に成長して行く雰囲気を感じ取ることができた。

これはシナリオの問題だと思うのだけど、ある人物の正体が分かった後に、ガラドリエルが指輪作りを止めない展開には違和感があったけど。

逆にエルロンドは、キャラクターもルックも映画版の印象とは繋がりにくい。アゴとか。でも、力の指輪のエルロンドとして魅力的なので良し。ドゥリンとの関係もレゴラス、ギムリを連想させて微笑ましい。

それと中つ国の各種族に非白人をキャスティングしている所だけど、ストーリーを追って行く上では気にならなかった。アロンディルなんかかなりカッコいい。

ただしロード・オブ・ザリングが、様々な種族の来歴など割と緻密な世界設定を持っている事を踏まえると、違和感も感じる。各種族内の特定の地域、部族出身の人物には外見に違いがある、といった様な理屈があった方が、トールキンの作り上げた世界に馴染む様に思う。雑に非白人を扱ってしまうと、ポリコレ感が強くなってしまうし、大事な事なので丁寧に扱って欲しい気はする。

断片しか残されていないトールキンの中つ国の第二紀の記述を、ある程度の時代的な変更・編集も行いつつ描く本作。結構アクロバティックな事を行なっている様にも思うけど、ここまでの所は上手くいっている様に思う。打ち切りにならずに、ちゃんと5シーズン完走して頂きたい。
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