このレビューはネタバレを含みます
●第1話:リラの花咲く頃
タクシーで妊婦さん譲ってなかったら野口と並木、ふたりは再会していたのか…!ライラックの花。ちゃんと時代感出すために映像の質感を変えたり消費税5%の話をさりげなく盛り込んだり、時代背景を理解しやすくしている点は好感が持てる。也英自らの初恋に想いを馳せさせる次世代の初恋の描写→並木くんとの回想シーン(並木が告白する名シーン)。そしてタクシーに乗車中、也英を見かける並木→あのタクシーを追ってください→ラウンドアバウトですれ違うふたり。上空のラウンドアバウトのカットからアンプ(CD)のカットへとディゾルブする。
「どんな出来事も、人生にとってはかけがえのないピース。でももし、大切なピースをなくしてしまったら」
この言葉で締める第1話、構成的に完璧です。
「好きな食いもん知りてえってのは、きみのことが好きですって意味だ」
「じゃあ並木くんは?好きな食べ物なんですか?」
→ここで泣いた
「おれ?ナポリタン」
「野口は何?野口の好きな食べ物。何?」
「海老…」
「おれ、野口が好き。初めて会った時からずっと。俺と付き合ってください」
→ここで泣いた
「はい。私も並木くんのことが大好きです」
「ちょっとぉ!そこのクソ坊主!吸うならもっとコソコソ吸いなさいよ。それからあんた、これだけは約束すること、日付が変わる前に何があっても必ず帰す。妊娠させたら殺す」
「はい!!!」
●第2話:きみの声
家電からはじまる、めちゃくちゃいい。也英の親がふふ、恋してるわね、みたいな表情で微笑ましい。ベッドで足バタバタ、分かる。両想い、ずるいぞって思っちゃう。
「たまにはデートでもしたら」
大きな疑問を残してサスペンドする、ドラマではめちゃくちゃ大事ですね。要は「なぜ愛し合うふたりは離れてしまったのか」というところ。
無線を拾って也英を探す並木。ー声を聞けば分かるーなんて素敵なんだ。
「人が一生のうちに何かしらの接点を持つ人と出会う確率は、20万分の1なんだって。で、ちょっと顔見知りのやつってなると、200万分の1。そっから、親しくなるのは2000万分の1。ダチって呼べるのが2億分の1。で、親友はさらにその20億分の1。そんで、最愛の人と出会うってなると、その確率は、60億分の1になるわけ!」
「とにかく、奇跡やばくないってこと!」
「やばい!奇跡やばい!」
この奇跡についての回想シーンが次へのいい仄めかしになっている。
海老が出てくるのも第1話の振り返り。大人になってもまだちゃんと好きなんだ、という。
ロスジェネ世代、100社落ちた旺太郎。木簡が好きなのは後世に残すこと目的にしていない、生の声。報われなかった人として機能している。
どうしてこの仕事?という話題がいいフックになっているね。運命とか信じない、恋愛の話になると急に戸惑う也英、という描写。過去の傷を匂わせる展開。『タイタニック』。
イヤホンシェア。
「煙草の味」
「フレーバーと言いなさい」
綴の恋。足バタバタ。時代を超える。
まさかの再会。也英って綴の母だったの…?
●第3話:ナポリタン
どこ住んでんねん也英からのスタート。
「空なんて、3センチしかない」
自衛官として訓練する並木。大学でミスコンに選ばれ大人気の也英。それぞれに夢があったんだよなあ。次世代に自らを重ねる。
やっぱりカルテット然り寝ている満島ひかりは大正義すぎる!コインランドリーのシーンよいなあ。
町田嫌なやつだな!嫉妬しかりハタチそこいらのふたりのすれ違いらしい、とても、とても若者らしい。つらい。
「コインランドリーは物騒なんで」
ふたりが離れた理由が何となく分かった次は、なぜ也英は並木を覚えていないのか?というところに。宙吊りの仕方が上手い。ナポリタンが好きということも覚えていない。記憶喪失?
事故?!外傷性くも膜下出血。逆行性健忘。発症時に近い記憶ほど失われる傾向。
なんてこった…。
●第4話:Space Oddity
宇宙の衛星とラウンドアバウトをディゾルブする仕掛けいいぞ。
ナポリタン。毎月11日はパスタ大盛り無料。
また1から2度目の恋がはじまるのすごい。何十億分の1だ。みたいな話、後半出るだろう。
記憶喪失の也英。あんたはあんたのやるべきことをやりなさいと也英の母親に言われる並木。
昔のことはちゃんと覚えてる。ここ何年かのことがどうしても思い出せない。思い出すことにも臆病になったんだね。
「シャンプーとコンディショナーの間って普通なに考えます?」
「いやあ、そういう、何でもない普通の時間にねえ、最近ふっ、て考えちゃう人がいて。見慣れた文字の、牛丼の並とか、木曜日の木とか、お天気の晴れとか、国道の道とか、見ると、つい目で追っちゃうというか。そういうのって…」
「いっちゃいなさいよ!気になるんでしょ?」
「ほっちゃれの底力、見せてやりなさいよ!」
娘宛に来てた娘の恋人からの手紙は見せない、みたいのよくあるよな…。これが後半に効いてくるのは分かってんだこっちは。→まさかの返却され燃やす。
「運命とか信じない」は脳外科医の元旦那由来か…というのも回収されたり。
火星が大接近。15年ぶり。
結婚妊娠早すぎるやろ…。
2035年で53歳。2003年で結婚妊娠てことは21歳…。気が早いという設定も効いている。
「遠くの星を見ることって、もう存在しない過去を見てるってことになります」
「ならなおさら眩しいです」
「のぞみってご存知ですか?」
「98年に打ち上げられた日本初の火星探査機。あの頃のぞみが世界を変えてくれるかもしれないって本気で思ってました」
「ミッションは失敗、役目を終えて、今も宇宙のどこかを漂ってます。私の名前もね、のぞみと一緒にまわってる。意味なんてもうとっくにないのかもしれないけど、とにかくまわってる」
タクシー待ちのシーンよい。待ちたい。長々と待ちたい。
そういえば並木には彼女いたな、というの思い出したし、なんなら結婚予定だったのか、という。不穏な流れ来た。
●第5話:Talk in Sign Language
也英、手話できるの?いいやつ。これも絶対回収するやつだろ!
「野口…」
めちゃくちゃ気にしてる恒美。
パイロットになったのは、丈夫だからとりあえず自衛官にでもなれば、という親のすすめ、「かっこいい」という也英の一言。
「大切な人を守れる人に」
詩と綴、いいな。名前の関係もいいな、と今さら気づく。
「あたし信じてるの。それが本物なら必ず誰かに発見されるって。マルコ・ポーロが黄金の国見つけたみたいに。あたしはいつでも飛び出せるように、爪を研いで、ついでにかわいいマニキュアも塗ってその時を待ち構えてる。大丈夫。きみが全世界に黙殺されても、あたしはもう綴の音楽を見つけてる」
11日のナポリタン…行けなくなるとは…。なんてこった…。
「了解しました〜…」
急に出てきた中尾明慶のプロポーズめちゃくちゃよかったな。髪切ってもらって、俺を幸せにしてくれって最高じゃないか。優雨ところどころ聴こえてないか?と思ってしまった。
どうあがいてもノーザンライツビルに導かれる也英。也英を守った並木の「良かったぁ…」という言葉は也英のことを交通事故から守れなかった時からの想いなどをずっと持ち合わせていて心から発した言葉なんだろうと思った。
手話できる也英!きた!
●第6話:The Sixth Sense
英語ができるのは父親の影響。ハリーポッター。
治るまで専属タクシー運転手になるという也英。泣ける。ホスピタリティがすごい。
磁石と懐中電灯。飴も。あの頃の也英が今も。
「うちの彼女の唯一の欠点は、自信がないことだな。こんなことしたら笑われるかもしんない。がっかりさせるかもしんない、頭良すぎていっつも先回りして、落下点を予測して守りに入る」
「それ、パパにも言われた。きみが外野手ならゴールデングラブ賞だな」
富豪の厳しい姑。夫婦間のしんどいすれ違い。
「離陸ってやり直しが効かないんです」
「きみに見せたかった」(未送信)
いつも一番いいところをくれる也英の父親。也英にも引き継がれていたね。綴にあげてたもんね。タピオカドリンクが2000年ごろに流行ったと知る(「不易とタピオカドリンク」という台詞より)。
「也英のどこがいい?」
「運命なんで。誰がなんと言おうが。反論は受け付けません。いくらお父さんでも。だから俺はあいつのために当たり前にいい男でいたい。愛する人には自分が持てるいっちばん綺麗なものをあげたい。いまは何もないっすけど」
「泣かせんなよ」
「はい!」
父親は違う人を妊娠させていて、也英と母親は選ばれなかった方。也英はそうした経験から失敗しないように、傷つかないようにっていつも踏みとどまってる。
並木はかっこいいね、自責だね。母親にも言い訳せずに自分のせいにしてひたすら謝る。也英を守る姿勢、かっこいいぜ。
明日でリハビリ最後、つらい。
「並木さんはどんな高校生でしたか」
「それで、並木さんはその子落としたんですか?」
この会話つらすぎる。天狗山はふたりの思い出の場所だもんね。何故か涙が出てくる也英。
「野口さんは、どんな高校生でした?」
「そんなの忘れちゃいましたよ」
「輝いてたと思いますけど。今がそうであるように」
「考えないようにしてるんです。過去がどうであったとか、未来がどうかとか。夢も、綴との暮らしもあきらめて、何にも成し遂げられなかった不甲斐ない過去。未来に対しても、何も望まない。期待して失うのはもうたくさん。でもね、時々ふっと、ほんとたまーに、虫の知らせじゃないけど、感じるんです。こんな、取るに足らない人生の底の底の方で何かとてつもなく大事なものをなくしてるんじゃないかって」
「ごめんなさい、帰りましょっか」
からのキス…!!!なんてこった…。
●第7話:夢のあとさき
「晴道。私はどこにも行かないからね。恒美の恒は恒星の恒。見上げればいつもそこにいる星。晴道が迷って立ち止まっても、たまに道を踏み外しても、変わらず足元を照らすから」
姑問題。母は無学な労働者、町の工場で働いて女手ひとりで育てた。他人から蔑まれる筋合いはないと。そして離婚。
「もう決めたから」
「かわたれ時って言うんですって、夜と昼、闇と光の狭間」
「かわたれ時のアイスクリームです。いいことあった時と、悪いことあった時は食べていいことにしてるんです」
「この世の地獄です。間違いと分かってて進み続けるのは」
並木、ちゃんと婚約者の恒美を褒めるところ好感持てるぞ。
行人に綴を持ってかれたね…。つらいね。
うわ、機内食、也英とつながってるんだね。
「神様はなんでこんなつらい運命背負わせるかなあ」
「運命なんてないから」
空港での奇跡の出会いが実は前にあっただと…。
五感によって記憶が戻ることも。プルースト現象。
「要は…肉体の記憶」
●第8話:或る午後のプルースト効果
リスは一生懸命隠すけどどこに隠すか忘れちゃう。忘れんぼのリスがいるから森が育つ。
「俺らは忘れないようにしないと。2001年3月11日。北見高等学校、優秀な成績…かどうかは分かりませんが、無事、卒業」
「忘れ物に注意」の占いはいい伏線というか示唆。
ツンデレっぽい恒美めっちゃいいな。捨てがたい(誰目線)。カープの津田恒美から来てるの結構コアな設定で好き。
「恒美のことは好きだよ」
「何番目に?」
「1回表、ノーアウト満塁です」
恒美の恒〜
「やっぱりぼく運命ってあると思う」
海老まで食べられるようになったってかわいい。ここにきて旺太郎が背中を押す人間として機能。
「逃げるな、野口也英!前を向け、息を吸って前進しろ!傷ついたって、みっともなくたって、人生は飛び込まなくっちゃ」
「V1超えて走り出したら、何がなんでも飛ばなきゃなんねえ」
「最後に会いたいのは?」
「ごめん、恒美じゃないです」
「ずっと忘れられない人がいる」
「うん、それでこそ晴道」
「並木さん、あなたが好きです」
ナポリタンの店行かないんかい!会えや!!
コーンポタージュとってある。並木も飴とってある。綴がいい仕事した。CDプレーヤー。『First Love』の入るタイミングが完璧すぎる。鳥肌立ったし号泣した。也英の記憶が。
●第9話:初恋
高校受験の模試の時からふたりは出会ってたんだね。
ふたりのタイムカプセル。煙草の空箱に入っていた手紙。
詩ちゃんが一歩踏み出す勇気、背中を押してくれる。慣性の法則、一度止まったら動かないまま。
「その動かないものに力を加えるのが、夢だったり、好奇心だったり、愛する人の存在だったり、するんじゃないのかな?心に芽生えた、どうにもならない欲求は、時に岩をも動かす、有名な法則ですよ、たしかニュートンが300年前に証明したはず」
詩が海外へ行ってしまう、綴を空港まで送る也英。タクシーの運転手という設定がここに来て光る。めちゃくちゃかっこいい。告白できた綴。言わなくても伝わる、音楽に込めた想い。泣いた。
又吉出てきたのもいいし、手をつなぐ老人夫婦、いろんな乗客にあるそれぞれの人生。置き忘れのマルボロ。初恋の味。
有休40日分。仲間が応援しているのが微笑ましい。けれども世界はコロナに包まれる。愛する人との距離、肌のぬくもり。これまで当たり前だと思っていたことが当たり前じゃないと思い知る。
3年後、綴は有名なトラックメーカーになっていて、詩とも再会。
並木の一目惚れ。不良だけどやさしいんだよな。妹がからかわれたからとか、本が閉じそうになったからしおりになるものとして切符を挟んであげたとか。うなじって解答欄に書きまくるのかわいい。也英が北見高校(超進学校)志望だったからひたすらに勉強を頑張る並木。ここでも泣いた。
「いや、大丈夫。絶対また会える」
「あの日きみは、俺に生きる意味と進むべき道を教えてくれた。俺の夢はきみを幸せにすることです。2001年3月11日並木晴道」
手紙に追伸があった…!!!
日本の雪国から世界の雪国へ。いいね。
「晴道!」
名前呼んだ瞬間、泣いた。
名前呼ばれて分かっただろうね、あ、記憶戻った也英だと。
「晴道、あなたが私の初恋です」
「煙草の味」
「だから、フレーバーって言いなさい」
也英も切符を頼りにあっぱうしに会いに行ってたんだ。
ふたりはそれぞれパイロットに、CAに。
最後の「ちょっと忘れ物」は佐藤健ファンを想ったプロデューサーあたりの意向な気がしたけどアリです。