喜連川風連

サンクチュアリ -聖域-の喜連川風連のレビュー・感想・評価

サンクチュアリ -聖域-(2023年製作のドラマ)
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身体能力に優れた不良がスポーツに目覚めのし上がっていくジェネリック・スラムダンク。

日本のスタッフ陣(カメラや美術や照明)はとても優秀で金と熱意と正確なキャスティングさえあれば、まだまだ面白いものが作れるのだ。

昨今の目の肥えた観客からすれば、美術やロケ地選定、キャスティングに手を抜いてることはすぐバレる。

が、このサンクチュアリは抜かりなかった。

巡業のシーンでは、ありとあらゆる力士のような体躯の人を集め配置し、ポスターや貼り紙に至るまで作り込まれている。

相撲部屋の汚さや、稽古部屋の砂の美しさに至るまでディテールが細かい。

その細かさはキャスティングにおいても発揮されている。

猿谷役の澤田賢澄や静内役の住洋樹さんは本物の元力士だそうだ。

後のインタビューで、役者を怪我させないように取り組みの際は相当気を遣ったんだとか。演技も、役者専業の方のような上手く見せようとする感じが全くなく良かった。

特に猿谷が引退を伝えるシーンは役者が本業の方ではできないような抑制の効いた芝居で、戦力外通告のドキュメンタリーを見ているようだった。

やっぱり個人的にはうるさくない演技の方が好きだ。演じてやろうという自意識が見え隠れしただけで、興醒めしてしまう。

脚本においては「技」を感じる。猿桜を物語の軸に置きながら、忽那汐里さんを配置することで、相撲初心者や女性もノレるように配慮されている。

天才ばかりで見ているのがきつい人には凡人・染谷将太が配されている。

記者である忽那さんが一緒に自転車に乗ってトレーニングをするシーンは若干無理があるように思ったが、構成の都合で若干無理をしているところは、多々見受けられた。

ただ、相撲系の作品では、出色の出来で、後にも先にもこれを超える作品は出てこないように思う。

主演の一ノ瀬ワタルさん、怪演でした。素晴らしかったです。往年の勝新太郎のような名優になって欲しいものです。
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