YukiSano

グレイマンのYukiSanoのレビュー・感想・評価

グレイマン(2022年製作の映画)
3.3
NETFLIX史上最大の制作費にして凡作。
本当にウィンターソルジャーやエンドゲームの監督か?と疑いたくなる。ジェリー・ブラカッイマー&マイケル・ベイが撮ったような作品。

捻りのないストーリー、ありきたりなキャラ、工夫のない派手なだけのアクション。穴だらけの作戦。退屈しそうになるとウルトラ派手なアクションで誤魔化してくるので最後まで見れるが何も残らない。

こうして眺めて観ると、キャラ造形が完璧な007や、戦い方の工夫とリアリズムのボーン、とにかく個性的なキングスマンなどは、本当によく考えられているのだと感心する。今作は本当に何の個性もないので差別化出来てない。

主人公が影なき男な理由がトラウマから来るものでもなく、タッグを組む女性との共通点もなく、敵も味方も作戦が雑。スパイなのに全部、正面突破する度胸が凄い。とにかく人物達に乗り越えるべきテーマがない。単に生き残るためだけ。

女性たちの苦労も描かれるが、ヒロインと少女と敵方の女の上司全てに繋がるテーマや共時性もないので単にコンプラに従っただけに見える。アナ・デ・アルマスは007より見せ場があるがパロマほどの魅力はない。他にもやたらと靴ネタ、銃の受け渡し方に拘る描写があるけど意味不明で不発。

どうせなら主人公が全身武器人間で体内にも仕込み武器を隠してるとか、それくらい無茶苦茶な設定の方が良かった。少女も過去に主人公から習った護身術や暗号合図などがあってそれが伏線になって活躍するとか、女性スパイならではの苦悩からアナ・デ・アルマスと女上司が葛藤しながら対比的に描かれたりとか、ルッソ兄弟ならそれくらいやってのける演出述があると思うのだけど…

やはりNETFLIXの賞狙いではない視聴率目当ての作品はシナリオが雑。ルッソ兄弟はアベンジャーズ以外は真価が分かりづらい。恐らく始めからキャラ設定がある無茶苦茶漫画的なものを独自の解釈をして社会性を付与するのは上手いが、オリジナルを作るのは下手と見た。もしくはNETFLIXが急がせすぎで、マーベルはケビン・ファイギが徹底的にシナリオを洗うなどして高水準に達していたのだろう。

とりあえずシリーズとして続かれても個性がない予定調和的な作品なので、続編は他の変態監督に任せてルッソはプロデューサーの方に周ってほしい。彼らは長年企画しているというハリウッド版「ガッチャマン」を監督していただきたい。その方が絶対に面白くなると思う。

そして、ライアン・ゴズリングはこんなナンパな作品に出ず、ずっと渋い路線を突っ走って欲しかった…かつてのジョニーデップのようにインデペンデント作品で輝く人だと思うので、デップやニコラス・ケイジみたいにブラカッイマー路線の映画に出て名優破滅の道を辿らないでもらいたい。

NETFLIXは業界にとって毒にも薬にもなる危うい劇薬だと今回で分かった。ホンマに才能ある人たちをお金で食い潰さないでほしい。
YukiSano

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