ブラックユーモアホフマン

アダム&アダムのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

アダム&アダム(2022年製作の映画)
4.0
アダムとイヴじゃなくて、アダムとアダムね。邦題の方が良いかも。

ポストスピルバーグ的立ち位置をここ最近ぐっと駆け上がってきたショーン・レヴィ。『フリー・ガイ』が彼なりの『レディ・プレイヤー1』ならば、本作は彼なりの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。
1985年から行くマーティ・マクフライが大人アダムで、1955年の若いジョージ・マクフライが子供アダムで、ドクがパパ、みたいな。
そして愛犬の名前はアイシュタインじゃなくて……笑

意外とSFアクション色が強くて、別にそういうのはそんなに期待してなかったんだけどな、とは思った。アクションシーンよりヒューマンドラマシーンに興味があったんだけども。BTTFもSFのルールを借りた青春映画なのが面白いわけで。

冒頭、宇宙空間での宇宙船チェイスシーンでThe Spencer Davis Groupの「Gimme Some Lovin’」がかかるのは確実に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が作ったSF映画の新たなスタンダードだなと思い、また宇宙船などのデザインがJ.J.エイブラムス版の『スター・トレック』っぽいなとも思ったのだけど、その両方に出ているゾーイ・サルダナが本作にも出ているというのは、いささか直球すぎるキャスティングではないかと思った。

ちなみにそれに付随して言うと、敵のコスチュームや武器などのデザインに全く目新しさが無いのも残念。その辺の設定は結構テキトーそう。

MCUキャストで言えば、マーク・ラファロもまたブルース・バナー的な科学者の役で、これもヒネリのないキャスティングで面白くないなと思った。あとやっぱりラファロはブロックバスター映画では真の輝きが見れない。

キャサリン・キーナーとの共演作で言えばジョン・カーニーの『はじまりのうた』やスパイク・ジョーンズの『かいじゅうたちのいるところ』もあるけど、やっぱそういう規模感の映画ぐらいがラファロは真価を発揮する。大味な演技は似合わない。

一方でライアン・レイノルズにはもっとふざけてて欲しい。今回、結構マジメな役だったな。もっと好き放題やって欲しいけど、プロデューサーも兼ねているのを見ると、たぶん彼自身がこういう演技の幅も見せたいんだろうな。でもやっぱり好きです、ライアン・レイノルズ。

ジェニファー・ガーナー綺麗だったなあ。

とは言えNetflix映画はディズニーほどは予算が無いのか、キャサリン・キーナーの若返りCGがショボくてキモかったな。ゲームみたいなクオリティだった。

ショーン・レヴィ、『フリー・ガイ』でも思ったけど、会話シーンの切り返しが細かすぎるきらいがある。そんなに都度都度切り返さなくていいよ、ちょっと見ててうるさいよ、と思うところが何箇所か。

あと脚本もちょっと力技すぎるな、と。やっぱアクションシーン要らないからもっと削って、親子の物語を描くドラマシーンをもっとちゃんと丁寧にやって欲しかった。藤子不二雄的な、少し不思議系SFにもっと寄ってて欲しかったな。

エモーションを音楽に頼りすぎだとも思った。しかしFOXサーチライト作品的なスコアで、凄い好みのサントラだなと思ったら、大好きな『プールサイド・デイズ』の大好きなサントラを手掛けた、大好きなロブ・シモンセンじゃないか!!FOXサーチライトっぽいというか、まさにその通りだったわ。どうりで好きだと思ったぜ。

気になったところばかり挙げてしまったけど、好きなキャスト、好きな筋、好きなスタッフで概ね満足。だし、ラストが素晴らしかったので+0.1。

【一番好きなシーン】
ラスト。三人で。消え方も上品。一人残されたラファロ。あの瞬間がこの映画のベスト。