【まだ3人、でも心は6つ】
静謐な美しい歌に合わせて流れる、一本の川のような作品。
静かに、だがとても深く、始まりと終わりを優美な曲線でつなぐ。
私は、この川に一人の男の人生を見出した。
特筆すべきは、何層もの深みがあるストーリーもさることながら、役者陣の演技の秀逸さだろう。
マハーシャラ・アリのショートスパンでのオスカー受賞は、まぐれではなく、紛れもない彼の並外れた比類なき演技力の賜物であることがよく分かる。
個人的には、今作でも十分オスカーに値すると思う。(妻役のナオミ・ハリスも同様。)
彼の瞳、佇まい、醸し出る全てが素晴らしい。
アリがメールで直々にオファーしたという、ナオミ・ハリスも”スワン・ソング”の旋律に絶妙な調和をもたらしていた。
そして、オークワフィナ。この役を彼女が演じることの意味の大きさが、”スワン・ソング”の調子を見事に整えていた。
一言、素晴らしい作品だった。
