せつ子

メタモルフォーゼの縁側のせつ子のネタバレレビュー・内容・結末

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

最高に良かったです😭
17歳の女子高生うららと75歳の老婦人がBLをきっかけに友情を紡いでいく物語。

漫画もすごく好きでしたが映画はよりドラマチックになってて涙腺崩壊でした。

芦田愛菜ちゃんのうららは可愛すぎるかと思ったけど、ちゃんと地味な女の子に見えて、演技も自然でほんとにうまい。宮本信子さんのおばあちゃんも、気品があるのに茶目っ気たっぷり。

人付合いが苦手で同級生の友だちがいないうららと、夫に先立たれ一人で暮らすおばあちゃん。BL漫画に出会い、ふたりが友だちになっていく中で、なんとなく寂しく張り合いのなかった日々がときめき始め、ついには漫画を描く挑戦をすることに。
泣かせにきてるわけじゃないんだけど、心臓がキューっとなって震えるシーンがたくさんあって、終始泣けてしまいました。

うららの想像の中で、漫画のキャラクターの咲良と会話するシーン。「咲良くんは大事なものを大事にできてすごいね」漫画も上手くかけないし、人と上手く関われず好きなものを好きと言えない。そうじゃない人のことを「ずるい」と妬んで、そんな自分が一番嫌いで。壁にイラストが描かれて、手と手を合わせて話す演出がとても綺麗。

そんな不器用なうららが一生懸命漫画を描き始めるシーン。縁側で失敗した原稿をトレースする後ろ姿に、小さい頃同じことをした自分を思い出すおばあちゃん。思い出がキラキラ光っててなぜかきゅーっと泣けてくる。ひとつのことに一心不乱に打ち込むうららのひたむきさにも泣ける。

しかし!創った漫画を売るはずの即売会に出られなかったうらら…。ここは漫画と結構展開が違ってて、縁側で悔し涙を流すシーンは映画ならでは。この展開はうららの弱い部分を描きつつすごく共感できて、こういう脚本にした岡田さんすごい。

幼なじみの紡が海外へ留学する彼女を見送るか迷った時、背中を押すうらら。紡とうららの間にもかけがえのない関係がある。小さいころから共に遊んで育って、大事な思い出を持っている大事な人。ちょっと無理をしてでもその人のために出来ることをしようと思える人。

劇中漫画のモノローグと重なりながら、紡やおばあちゃんがうららにとってどれだけ大切な存在だろうと思う。大切な人といるだけで、嬉しくて、力が湧いてくる。大切な人といると、「自分自身の形が分かる」。

劇中漫画の恋人同士のモノローグなんだけど、それは愛情でも友情でもきっと変わらなくて、大切な人がいることが力になる。
うららとおばあちゃんが友だちになれて、太陽が昇らなかった街に日が射したように明るくなって、あぁ友だちっていいなぁ、好きなものを好きと言い合えるのっていいなぁとしみじみ思う。

脇を固める布陣もめちゃくちゃ良くて、漫画家のコメダ先生に古川琴音。漫画原作だけあって漫画愛にも溢れてて、漫画家がファンの存在に励まされたり、漫画に励まされて生きていけたり。

書道教室の生徒で印刷所のおっちゃんに光石研、難しい漢字好きな男の子の書の使い方も効いてる。鬱屈やら貫徹やら面白い。

うららの母ちゃんも自然体な良い台詞が多くて、読み返してみたら基本漫画に忠実で原作がめちゃくちゃ良くできてるんだなと改めて思う。

主演のふたりが歌うエンディング曲が最高の締めくくり。「全て無くし果てても、これさえあれば平気さ♪」と軽やかに歌う。それは夢中になれる漫画に出会えたことのようでも、大切な親友に出会えたことのようでもあって。

あ、カレーの匂い。で爽やかに終わるとこにも拍手!
せつ子

せつ子