キツネとタユタム

ハケンアニメ!のキツネとタユタムのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
4.6
新人アニメ監督が、天才アニメ監督と同時間帯枠でのアニメ放送が行われ、人気で勝ち、「覇権」を取りにいく話。

モノづくりに関わる人であれば、誰でも心を動かされるであろうテーマであり、終始胸が熱くなる。
自分も本気になって、自分の何かを削るように集中してモノづくりをしなくてはと感じてしまう。
本気で自分を削り作り上げたものでなければ、他者に意思が伝わり、影響を与えるようなモノは出来ないのかもしれない。
本作はそんな「本気になってやること」の重要性を、製作陣の本気を感じる作品の出来で伝えてくれるので、信憑性も相まって凄まじい感度で突き刺してくる。

「納得できないものを世に出したらおしまい」という天才監督の言葉も、痛いところを突かれた気持ちになる。
果たして、ずっと納得のいくものを提供出来ていただろうか。改めて仕事においても、モノづくりにおいても気持ちを引き締め直したくなる。

新人アニメ監督であっても「相手が天才であっても同じ土俵で戦う意識」を持って、最高のものを作り上げようという気概も学びたいところである。
どんな立場、状況、知識量であっても、自分の感覚を信じて、正しいと思う道を突き進みたくなる。

吉野耕平監督は、長編デビュー作「水曜日が消えた」の作成直後に感じた「一生に一度のデビュー作でしか味わえない、上手くいかない感覚」を、傷が新しいうちに伝えたいという気持ちがあったらしい。
その新人ならではの葛藤がとても上手に描かれていたので、そういった部分も楽しめるものとなっている。
また吉野耕平監督ならではの登場人物の雅な感情を伝える表現には唸るものがあった。違和感なくとても素敵。言葉で語らず表情や仕草、相手との関わり様によって伝えてくれるのが素敵だった。

キャストは全員最高の極み。
新人アニメ監督役の吉岡里帆さん、天才アニメ監督役の中村倫也さんはもちろんのこと、チーフプロジューサー役の柄本佑さん、尾野真千子さんもとても良いキャラをしていた。
特に柄本佑さん。単調でドライな口調でありながら熱い気持ちを持っているキャラクターは癖になる。これはファンにならざる追えない。

アニメパートの出来も、覇権を取れるレベルのクオリティで出来上がっており説得力がある。
また本物の声優さんが声を当ててるのもよい。画面にちら見えする速水奨さんが可愛い。

仕事をすることの意義を再度思い出すことが出来る傑作。
「何のために」を再度考え、モノづくりに対する姿勢を直すきっかけになるので、やる気を失ってしまってる人は観るとやる気が出るはず。
キツネとタユタム

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