絶対の客人

ハケンアニメ!の絶対の客人のレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
4.6
7年前、天才アニメ監督の王子千晴(中村倫也)が手がけた「光のヨスガ」を見て魔法にかけられた斎藤瞳(吉岡里帆)は、公務員から転職してアニメクリエーターになった異色の経歴の持ち主。
 
7年後、土曜の夕方5時というゴールデン枠で放送される「サウンドバック 奏の石(サバク)」で監督デビューが決まった瞳だったが、ちょうど真裏の時間枠で放送されるのは、瞳の憧れるあの王子監督が8年ぶりに手がける新作、「運命戦線リデルライト(リデル)」だった!
 
同じ時間枠のハケン(覇権)をかけた闘いが、いま幕を開ける!
 
 
【バクマン。】【キャラクター】【ヒミツの花園(ドラマ)】【重版出来!(ドラマ)】等、「漫画」業界を題材にした実写作品はいくつかみてきたが、「アニメ」業界を題材にした実写作品は【映像研には手を出すな!(ドラマ)】ぐらい…しかも2話ぐらいでリタイアしたから当然劇場版も未見なので「アニメ」業界系作品は実質初鑑賞…だと思う。
 
この作品の素晴らしい点は、スポットライトが当たるのは主人公の瞳だけではなくライバルの王子…だけでもなく、「サバク」のプロデューサー行城理(柄本佑)や「リデル」のプロデューサー有科香屋子(尾野真千子)…だけでもない!
 
制作、宣伝、編集、脚本から、外注先のアニメーターや声優に至るまで、隅々までスポットライトを当て、彼らそれぞれの苦悩を描くと同時に、その苦悩に対する救いも彼らそれぞれにしっかりと与えられている。
 
元の原作が素晴らしいのかもしれないが、それを2時間の映画に見事落とし込んだ政池洋佑さんの脚本がとにかく素晴らしく、そこを細かく描くことが同時に、1本のアニメを作り上げることの大変な苦労を観客にみせる事にも繋がってる。
 
それは、改めて「京都アニメーション放火殺人事件」の犯人に怒りを覚えるほどに…
 
とはいえ、今作で描かれるアニメ業界のような "夢の職場で働けている” 人間に対する「やりがい搾取」的な体質は決して美化してはならない事だし、美談で終わらせてはいけない事で、改善していかなければならない大きな問題なのも事実…
 
…なんだけどヤッパリ、夢の職場でなくとも…さらに “ものづくり” とは全く関係ない仕事であっても、過酷な労働環境で必死に働いていた自分にもグサグサきたワケだから、今現在も必死に働いている世の働きマンには絶対に刺さるハズ!
 
 
そして劇中アニメの2作品、「サバク」と「リデル」のハンパない作り込み!
 
各12話…合計24話分…原作者の辻村深月さんが書いたプロットと吉野耕平監督が描いたイメージボードを元に、トップクラスの制作陣が実際にアニメ化!
 
ちなみに吉野耕平監督は過去に独学でアニメ制作を学んだ後、新海誠監督の元で【君の名は。】のCGクリエーターとして参加している、アニメクリエーターとしても凄い人!
 
【サウンドバック 奏の石】
アニメーション制作:コヨーテ
制作協力:白組(STAND BY ME ドラえもん)
 
監督:谷 東(若おかみは小学生!)
 
キャラクター原案:窪之内英策(ツルモク独身寮/日清食品カップヌードル「HUNGRY DAYS」CMキャラクターデザイン)
 
メカデザイン:柳瀬敬之(機動戦士ガンダム00)
 
声優
高野麻里佳(映画内でもキーパーソンを演じる)
梶裕貴
潘めぐみ
速水奨
木野日菜
 
【運命戦線リデルライト】
アニメーション制作:Production I.G(攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX)
 
監督:大塚隆史(プリキュア!シリーズ)
 
キャラクター原案:岸田隆宏(魔法少女まどか☆マギカ)
 
キャラクターデザイン/作画監督:高橋英樹(ハイキュー!!)
 
声優
堀江由衣
花澤香菜
小林ゆう
他…
 
コレですよ!もう文句のつけようがない布陣!
どういう内容のアニメなのか…それは是非、映画をご覧ください♪
 
 
そして主演の吉岡里帆さん!
 
過去に【見えない目撃者】で笑顔を極力抑えた演技は見たことはあるが、今作はまたそれとは違い、内気でありながら1本図太い信念を持った…という設定と同時に、疲労でやつれきった、ブスではないけれど…ぐらいの絶妙なラインを見事に演じきっていて、個人的に過去最高の演技力!素晴らしい!


ちなみにこの映画には、パンフレット単品(850円)とパンフレットと劇中アニメの設定資料集がセットになった初回限定盤(1700円)があって、この映画における劇中アニメ2作品の本気度がうかがえる設定資料集は必見です!