るるびっち

ハケンアニメ!のるるびっちのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
3.5
新人と天才がトップ(覇権)を争う。
天才監督は、タブー破りの画期的なことをやりたくて周囲を振り回す。
新人監督は、周囲に振り回されて戸惑う。
最後は逆になり、天才は妥協し新人は信念を貫く。
クリエーションと商業の狭間の中で、どこまで貫けるかを描いている。
アニメは商売なので、成立するには妥協が必要だ。
しかし世界にひとりでも刺さるなら、他に理解されなくても構わないとはクリエーターの性であろう。プロデューサーなら決して言わない。

だが肝心の何を描きたいかが伝わらない。
天才の方は、ただタブー破りをしたいだけ。
新人は幼少期の辛さを救ってくれるような作品を創りたいと言うが、どんな家庭環境だったのか紹介されないので不明。
ネグレクトか虐待的な環境だったのかなとは感じるが、想起できるほどの情報は無い。
肝心の所が観念的なので、具体的に響かないのだ。
それは具体化した途端、ありがちになるからワザと観念的にして普遍性を持たせようとしたのかも知れない。
でもピンとこない。
共通体験がある人は、刺さるのかも知れない。

だが、そもそも伝えることの方法が間違っていると思う。
吉岡里帆演じる新人監督は、ハッピーエンドでは伝わらないと言う。
ハッピーエンドかバッドエンドで、作品の印象や強さは変わるだろう。
しかしテーマを伝える部位は、そこではない。
テーマを伝えるのは、クライマックスとその前の辺りだろう。
エンディングでは答えが出ているので、それがハッピーでもバッドでも伝わることに違いはないと思う。

勘違いしている。
そして勘違いに全力投球している。
なので白けた。
まあ、勘違いしてるのは私の方かも知れないが・・・

伝えるには、一体この主人公は何がしたくて、何が一番大事と信じているのかを明確にしないといけない。
そして肝心のクライマックス前後で、主人公の信念や目的は本当に正しいのか? 間違っていないか、それを比較する天才監督とバチバチと信念・考えの相違を闘わせ、浮かび上がらせないとテーマは伝わらない。
なのに肝心の幼少期のトラウマ(原動力)が不明なので、彼女がどんなアニメを創りたいのかが解らないのだ。
動機と決断(クライマックス)が大事だ。
エンディングはシメだから、そこにこだわるのは意味がない。
シメをラーメンにするかうどんにするかで、鍋の醍醐味が変わる訳ではない。
どこで伝えるかを誤解している。
ハケンアニメではなくゴカイアニメ。
るるびっち

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