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ハケンアニメ!のomomoのネタバレレビュー・内容・結末

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

そんなに簡単にギリギリに修正できるのか等の細かい部分は置いておいて、限りなくアニメの制作現場のリアルを追求しているように思った。主人公の背景がしっかり深掘りされているので感情移入もしやすいし、どんな作品を作りたいのかがよく分かる。昔自分が救われたアニメーションを超えるものを自分が作りたい。多くの人に届かなくても良い、自分のような閉鎖的な気持ちになっている子どもにとって、自分を救うようなちょっとしたきっかけになれば嬉しいという思いがあるんだろうなと思う。そういう描写があったからこそ、最後の視聴率で負けてもタイヨウ君が自分の作品を見て明るくなっている部分を見て心から嬉しかったんだろうなと感じた。
王子側のプロとしてのプライドや葛藤、プレッシャーも上手く描かれていて、喋り方、表裏の演じ分け、中村倫也の演技が相変わらず素晴らしかった。
高野さんは声優さんとして知らない方だったが、アイドル声優ということや自分が客寄せということも分かっている、だったらめいいっぱい客を呼んでやると宣言するところが潔くて気持ちいい。しかしだからといってプロとして作品を理解しようとする努力は惜しまず、作品の中で成長して演技の変化がちゃんと分かった描写にグッと来た。正直自分自身、最近の声優さんはアイドル化してきていてよく分からないなという思いもあったからそこをあえて描くというのが面白かった。
マイナス要素としては主人公以外の登場人物の深掘りが少ない、急にスローモーションになってものが飛び散る等の演出、視聴率争いの世間のコメントでのアニメーションの寒さ、せっかくのアニメ自体の深掘りが足りない、などなど…役者さんの演技は良いのだけど時間が2時間では足りないという印象。せっかくの劇中アニメのクオリティがもったいないと思った。
ただ、ラブストーリーやコメディ要素をほとんど入れずに仕事モノとして全力で描いている姿勢には気持ちよさがあるし、エピローグ後の余韻も良かった。見終わって良いものを見たなぁと浸れる良い作品だったと思う。
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