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チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしいのnomovienolifeのレビュー・感想・評価

4.2
ドラマはリアタイ組のチェリまほのファンとして映画化は大変嬉しく、とても楽しみにしていました。

しかしなかなか勢いのあるファンが増えてきてしまい、特にSNSを中心としたのファンの人達が集うところでは、ちょっと本心が語れなかったことがありましたが、Filmarksでは正直な感想を述べている人たちがいたので、とても安心しました。

彼らの勇気を借りて、正直に、作品・演出・プロモーション・日本の社会的なところから簡潔に、あくまでも個人的な感想・意見を述べていきたいと思います。

【作品について】

続編があったことは良かったです。今回はドラマ本編に比べると「真面目な作品」だったことは確かです。コメディ色が少しなくなり、余分なところが削ぎ落とされて、少々緊張感があったり「長く感じたシーンがあった」と述べている人もいました。しかしながら、風間監督が、演者を信頼した結果、彼らの醸す雰囲気を最優先したことで、このような演出になったのだろうと理解しました。全てにおいて、監督の人柄、真面目さ、そして優しさに溢れた、良い作品だったと思います。現場の雰囲気が良かったことも画面越しに伝わってきました。

【演出について】

雰囲気がよく、皆が仲良しなのは、とても良いことです。同時に作品としてのバランスが「映画作品」にしてはまとまりにくく感じました。安達と黒沢の「ドキュメンタリー」のような今作であれば、彼らの言動を、より自然に、まるで隠し撮りしたかのようにしても良かったかもしれません。特に、1番最後のシーンはぎこちなくさえ感じました。演者を信頼し、雰囲気を大切にすれば、赤楚・町田ペアの相性の良さ(ケミストリー)に頼りきり、アドリブの幅を利かせてあげても良かったと思います。アドリブやアクシデントをチラチラと宣伝でみましたが、これらを敢えて使うという手もあったように思います。

このようなジャンルでいえば、近年公開された作品といえば、行定勲監督の『窮鼠チーズの夢を見る』です。この作品は、ジャンル云々を超えて、映画作品としてズバ抜けて秀作でした。もちろん制作工程も、動機も、観客層も、違うかもしれません。しかし、全体のバランスが、一つの芸術作品となって初めて映画となります。キスシーンを入れない、もちろん性的なことも匂わせていないチェリまほは、客層を選ばず、他のところに焦点を当てて欲しいという狙いがあったのかと思いますが、残念ながら、それがあってもなくても大事なところは見失われませんし、むしろそこを隠すことで、ふたりが互いにしか見せない信頼感は描ききれません。会社・演者がNGだったのでしょうか?なにがともあれ、ここまでリアルを描き切るのであれば、そこにもリアルを取り入れるべきですし、なんともモヤモヤしてしまいました。

【プロモーション】

雑誌インタビューでは、ネタバレができないにしても同じような質問と回答の繰り返しで、作品への期待が薄れていきました。ビジュアルがあればいいというものではありません。質問内容も決められた内容ばかりで、解答も同じ。読者である私は、演者の作品への関心がだんだん薄くなっていった部分があります。今日本の映画界は世界の舞台に立っています。ポピュラーになればなるほど、業界の「雁字搦め」が目立ってきます。SNSでは、一般から質問を受け付けて答えるというようなことも行っていました。質問の内容はどれも見事でしたが、それは本来ジャーナルができなければならないことです。以前公開された『君の名前で僕を呼んで』の際も、差別発言をする人が登壇、勘違いした内容の記事を書く人が出るなど、勉強不足が目立ちました。もう少し、プロモーションも攻めて欲しいと思いました。

【日本の社会】

欧米に続き、タイ・韓国・中国でもBL(LGBTQも含む)というジャンルの作品は飛躍的に伸びてきました。日本でも、以前までは、なぜこれでOKが出たのかと思うほど、演者に羞恥心があったり役になりきれてなかったりする作品が目立っていましたが、今は良い俳優を輩出する登竜門的な役割を担いつつあります。初めてドラマの『チェリまほ』を観た時、「ちゃんとハンサムがハンサムを演じている!」と驚いたものでした。それは大変喜ばしいことです。また、同性愛であることを特別視しないことも、本作では意識されていることが分かりました。「同性愛」どころか「同性」という言葉自体がなかったように思えるほどです。社会がそれを当たり前のように受け入れてくれる世界を描くことは、まさに近い未来の現実なのだと信じたいほどです。しかし、残念ながら、芸能界では、カムアウトができない人達で溢れています。日本の社会以前に、日本のメディア自体に同性愛に対する大きな偏見とタブーが存在します。そこがまずは大きな課題だと、この場を借りて書かせて貰おうと思います。

ぜひ、このような作品が増えていって欲しいなと思います。
続編も、もし関係者の中でそれが可能あれば、ぜひ期待したいと思います。
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