【2022年キネマ旬報日本映画ベストテン 第5位】
『顔』阪本順治監督作品。交通事故を起こした伊藤健太郎の映画復帰作となった。共演は小林薫、余貴美子など。
思ったより悪くなかった。勝手にハードルを下げていたというのもあるけど。コンパクトで名優の演技が光る秀作。
ただ気になったのは台詞回し。あまり阪本監督作品は観ていないが、他でも違和感を覚える台詞回しがあったことを思い出す。
全体としては「しょうもなく」しか生きられない男を描いたコンパクトな人間ドラマとしてなかなか面白かった。こういうタイプの人間っているんだよな。周りに頼ってばかり、というかそれ以外の選択肢が考えられないというか。そのくせ被害者面しているのが厄介なあたり。
コワいのは他人事ではないということ。自分にもそういうところはあるし見下しているわけではない。一つでも環境が違えばこんな風になっていたかもしれない。自覚がないだけで本当はこうなのかも…
ところどころセリフや陳腐な演出が気になるものの、絶妙に「いる」人間を描いていてよかった。阪本監督はそこまで好きなわけではないが、こうした小品でもこれだけの完成度にできるというのは素晴らしい。
