ボブおじさん

ヘルドッグスのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ヘルドッグス(2022年製作の映画)
4.0
ヤクザ組織に潜入し腕と度胸でのし上がる元警官・兼高。愛する人が殺される事件を止められなかった贖罪を胸に復讐することにのみ生きていた。その闇と狂犬っぷりに目をつけた警察組織から、ヤクザ組織への潜入という危険なミッションを強要され…

ジャンル的には、潜入捜査ものというよりは、ノワール+アクション映画というところか。

このところ日本を完全に凌駕した感のある韓国ノワールへのカウンターパンチとして作られたように思えてならない。

ノワール映画では、暗黒社会や人間の心の闇を描き出すと同時に、残虐な暴力シーンや男達の絆と裏切りという世界観がストリート以上に重要になってくる。

この世界観の中に原田監督は、旧知の岡田准一というとっておきの役者を使い、ノンストップの格闘アクションをふんだんに取り入れこの映画を創り上げた。

だが、この映画の中には、もう一つ重要な要素が隠されているように思える。

それは岡田准一演じる狂犬兼高を巡るサイコボーイ室岡(坂口健太郎)と若きインテリ組長十朱(MIYAVI)の男同士の恋愛感情にも似た心の絆だ。

一切の感情を捨て復讐の世界に生きる兼高の圧倒的な暴力性が醸し出す色気に、室岡は憧れ、十朱は次第に惹かれていく。

男が惚れる男の世界は、昭和任侠映画や北野映画でも数多く描かれているが、それらとは明らかに違う妖しい空気が3人の中で醸成されていく。

そう考えると室岡が彼女との行為で射精出来ないことを告白したり、インテリチキンとの死の接吻のシーンにも意味を感じる。

この映画は、〝暴力に魅せられた男たちのラブストーリーでもある〟と言ったら言い過ぎだろうか?

いずれにしても岡田の実戦的な格闘アクションを堪能するだけでも見る価値あり!
ポスト真田広之として海外作品にも是非挑戦してもらいたい。

他のキャストでは組長の秘書を演じた吉原光夫は初めて見たが、その歌唱シーンも含めて圧巻のパフォーマンスであった。

原作は『地獄の黙示録』の要素の入った極道もので、そこにサミュエル・フラー監督の『東京暗黒街・竹の家』へのリスペクトも取り入れたとのことだが、この辺は相当な映画リテラシーがないと解らないと思う。もちろん私もわかりません(^^)。