抑制された演技演出とワンカット長回しの撮影手法や悍ましい音楽使いなど映画へのセンスを感じる川村元気の初長編
認知症を疑似体験させられるような原田美枝子の主観映像にはファーザーよろしくゾッとさせられるような恐怖を感じる
何よりアルツハイマーを患った原田美枝子、母親に対して表向き言葉にしないが何かしらの確執を抱えていそうな菅田将暉、中立的な立場で見守る長澤まさみのデフォルメし過ぎない繊細な演技は素晴らしかった
今村圭佑のカメラで撮影された映像も毎度のことながら美しい
ただ、物語に対する軸はやや弱いのかとも少し感じてしまった
登場人物に対する印象が反転したり、より奥行きを感じるシーンが少ない
描いていることに対して裏腹な感情が表出してこないので見たままの印象から映画が脱皮する瞬間が個人的にはあまりなく、センスのいい演出が際立つが飽くまでいい映画の枠を越えられなかったなというのが正直な感想
