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百花のchanmoreauのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
3.6
数々のヒット作を産んできた川村元気が
ご褒美に原作脚本監督by俺で作った
壮大な自主映画かーと思って観に行ったら
案外と飽きずに楽しめた😅 原作未読

冒頭のファーストカットから
フェイク長回しを仕掛けていて
油断してると「おや?」と思わせるぜー
と挑発してくるのがなかなか微笑ましい😊
一応「アルツで記憶を無くしつつある母」
というシーンで使われるので必然性はあり

予告では「記憶を無くしていく母と
過去に傷を持つ息子の微妙な関係」
のような物語として売ってるけど
実は「母か女か逡巡し息子を捨てた過去を持つ
シングルマザーの物語」なのだった
宣伝では全く出していないが
本作は圧倒的に鑑賞後、母の存在が残る
それは勿論原田美枝子の凄さゆえだ

それにしても改めて原田美枝子
私たちは彼女が10代の頃からその姿を
映像で見直すことができる
『青春の殺人者』
『ミスターミセスミスロンリー』
『愛を乞う人』
本作にはかつて彼女が演じてきた
印象的な役柄ともまた異なる凄みがある

現在実年齢で63歳だから過去のシーンは
四半世紀前つまり30代後半を演じている
メイクや衣裳の貢献さらにレタッチも
してるだろうけど、その姿にほぼ無理が無く
驚くばかりだ 濡れ場まであるしねー😮

要するに彼女がまだまだ「可愛い」のだ😀
「一人息子捨てて男に走る」ためには
見初められるだけの魅力が必要で
その説得力は充分にある
少なくとも自分にとっては
67歳の吉永小百合が『北のカナリアたち』
で案じたキスシーンより納得感があった🤭
今のアルツな姿でさえ「明るい狂気」がある
菅田含めて他のキャストはどうでもいい

撮影は1シーン1カットを多用していて
ちょっと鼻につくところもあるけれど
何度も出て来る背中のショットは悪くない
金魚鉢の番の二匹とか生卵などの小道具、
衣裳の分かりやい色分けは記号的過ぎかな
全体的に「策士、技に溺れる」って感じ😂

一番もったいないなーと思うのは宣伝
オープニングの数字からして
興収は5億前後で留まるだろう
つまり製作費宣伝費は回収できないはずだ
自分が所属する東宝が『シンゴジラ』のように
一社で全てカネ出してるならまだしも
製作委員会を組んで各社から金を集めてる
監督はそのスキームを誰より分かっている

それならば本作の「ドラマ性」を何故もっと
宣伝でアピールしなかったのか
これが完全な「文芸映画」ならまだ分かる
だが本作はやはりテレ朝他が出資した
菅田主演のエンタメ作なのだ
そして映画自体にも「売れる」要素がある
予告やポスターの作りからして
監督は分かりやすい「エンタメ映画」として
消費されたくなかったんだろう

つまり本作はやはり商業映画の枠を借りた
壮大なエゴの発露なのだろう
それ自体は結果さえ残せば悪いことじゃない
北野武の初期作がそうであったように

映画は誰でも一本なら監督できる
だから川村には何を言われようが
今後もしつこく監督を続けて欲しいねー😅
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