Koshii

ロスバンドのKoshiiのレビュー・感想・評価

ロスバンド(2018年製作の映画)
4.2
心がふるえる瞬間。音楽が心を揺さぶる瞬間に立ち会える素晴らしい作品。
思わず自分の体を抱きしめたくなるほど、愛おしい。


以下ネタバレを含みます。














それぞれが抱える悩みの種。その大小の程度は他の人には測れない。
種が発芽する瞬間を恐れる者。種を埋めた場所を忘れてしまいたい者。種の存在をある日突然突き付けられてしまう者。

僕たちの身近にもそれはあり、皆そのモヤモヤと日々葛藤している。

本作、「ロスバンド」ではロックを愛してやまない4人が、ロック大会に向かう中で、モヤモヤと対峙し、愛おしい成長を遂げるロードムービーである。バンドとしては極めて珍しい取り合わせで、音痴のメインボーカル兼ギター担当のアクセル、ドラム担当のグリム、チェロ奏者のティルダ、ツアートラックのドライバーであるマッティン。彼らは珍道中さながらのハプニングやトラブルに巻き込まれる。
無事に決勝の地までたどり着けるのか、という部分も見どころである。

この4人の共通して素晴らしく、大好きなところは、相手の気持ちを何よりも思いやる優しさを持っているところ。自分の抱える悩みをしっかり見つめるからこそ、仲間の痛みに気付いてあげられる。その愛を受け取る人も、純粋な優しさに溢れているから、自然と成長へと導かれていく。

中でもお気に入りのキュートなシーンを書き残しておきたい。

グリムが尊敬していた元スターに、現実を見ろと言われ、マッティンが怒るシーン。「子供の夢を打ち砕いていい権利はないだろ」

アクセルのボーカルにブーイングした客に対して、ティンダが「友達をいじめないで」とグラスの中身をぶっかけるシーン。

打ち砕かれたアクセルのもとに、「俺が行くよ」とマッティンが寄り添うシーン。

皆で壊れた橋を飛び越えるシーン。

決勝ステージで、マッティンが来るまで、自分のボーカルでつなごうとしたアクセルの勇気。気を利かしてチェロのソロパートに持っていくティンダ。おいしいメッセージで全てを持って行ったマッティン。みんなの顔見て、思いっきりドラムをたたくグリム。

この4人が出会えて、本当に良かった。
想いの乗った音楽は空気と共に、心をふるわす。

だから僕は、音楽が大好きだ。
Koshii

Koshii