みや

恋は光のみやのレビュー・感想・評価

恋は光(2022年製作の映画)
4.5
正直、文字数が多く野暮ったいあのポスターしかみていなかったら、手を出さなかった作品だと思う。複数の人のおすすめを目にして、アマプラの見放題に入ったと聞いたので鑑賞。
いやぁ、観てよかった!本気でキュンときた。

北代もステキだったが、東雲さんと西条の2人のシーンに特に好きな所があった。
例えば、2人で階段を登るシーン。東雲さんのスカートが風をはらむ。なんか、これから東雲さんの恋心が膨らむ予感を感じさせてキュンときた。
それから、天気雨があがった後のシーン。2人にあたる木漏れ日が、もう「恋は光」だった。

西条の佇まいや、部屋の雰囲気から感じる文豪っぽさは、原作者が舞台にした愛媛ということを意識した演出だろうか。(実際の映画は、オール岡山ロケらしいが…)by wikipedia
東雲さんの服装や実家の感じなどと合わせて、時代を超えた味わいの仕掛けが「恋」の普遍性を思わせた。
時折登場するスマホなどから「ああ、これは今の話だった」と引き戻されるくらい、いつの時代かわからなくなる曖昧さが心地よかった。

光の謎など、ストーリーの展開に合わせて考察も楽しめる。

シーロウ・キーター(笑)の名言に深く頷く一本。

<追記>
※少しネタバレに触れています。

暇に任せて、原作を一気読みした。
正直言って、ものすごい完成度の神作品。
登場人物の内面描写が、セリフ以外のモノローグで書き込まれていることもあって、それぞれに共感できる。とりわけ、自分は宿木嬢に心を動かされた。
原作ガチ勢の方々が、ラストの展開について熱くコメントを語られている理由もよくわかった。
その上で、もう一度本編を観たのだが、一回目を観た時よりも、更にこの作品が好きになった。

北代が、実は光っていたシーン。
原作ページでも泣けたが、二回目でもやっぱり泣けた。そして、その後の展開も、キチンと原作を踏まえながらの、納得の締めくくりだと改めて思った。
今もネットに残っている、原作者のインタビュー記事の中で、脚本・監督の小林さんに対して、「私以上にキャラクター理解が高い」と言ったようなコメントを残されていたが、原作愛にあふれた、とても質の高い2次創作といった感覚で、本作をとらえることも可能だと思う。
海にこそ行かないが、代わりに鮎の友釣りを取り上げるのなんかは、友人関係を少しずつ広げていく主人公たちに寄せた、映画的ないい表現だなと思ったし、シーンごとのシチュエーションは、原作と全く違っていても、出てくる大切なセリフや恋の定義の設定、そしてセンセの背景など、大事なポイントは外さず、時間内に収まるよう、見事にまとめられている脚本のすごさを感じた。
そして、ファーストシーンと対をなすように、エンディング後に挿入されたシーンで、本編では時間の都合上描き切れなかった宿木嬢の変化を押さえて終わるという目配りも素晴らしかった。

ということで、0.5追加。
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