『勝手にしやがれ』が往路なら、『気狂いピエロ』は復路。
『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』は色んな意味で対になった作品だと思います。どちらも同じ"男女の逃避行"を物語の軸にし、前者は地中海からパリへ、後者はパリから地中海へ。また、ラウル・クタールが撮影監督を務めたという点で両作品は一致します。
今作はゴダールとアンナ・カリーナ離婚後に撮られた作品ですが、ゴダールが如何にアンナ・カリーナを愛していたかが、この作品を見るだけでヒシヒシと伝わってきます。対してベルモンドはどうでしょう。軽やかな身のこなし、変幻自在の演技、今作のベルモンドに関してはルパン3世そのものと言えます。
私事ですが、ベルトルッチの『ドリーマーズ』劇中でシネマテークに通う主人公達の特等席は最前列だったという付け焼き刃の知識を持って最前列で鑑賞しました。何よりも、今作が2Kという高画質で、さらに映画館で観られることが本当に嬉しく、今回字幕翻訳を行った寺尾次郎氏の熱い想いも相まって、最高の映画体験となりました。
ゴダールもカリーナもベルモンドも一番脂の乗った時期に撮られた唯一無二の作品。助監督兼カメオ出演のジャン=ピエール・レオも忘れずに。
2022/04/22 1回目
【2022年180本目】