人間にしか出来ない唯一のこと。
加点方式で見ると1分ごとにポイントがガンガンに加算されていくという観客が求めてるもの全部ぶち込みますっていう心意気を感じる良い意味でのバカ映画。それもそのはず製作陣と観客の中でこのコンテンツの強みを共通認識しているからこそ出来る今このタイミングでこの曲流れたらアツくね、今このキャラがあれしたら激アツじゃね、などという全ての要素がベストなタイミングを100%ハズさないという絶対的な快楽。
『SSSS.GRIDMAN』では個人的にセカイ系の作品で必須な“全て知った上で全て受け入れる”という要素をちゃっかりクリアしていた。尚且つそれを神様側と造られた側の両方で達成し締めくくるという。ただキャラクターの掘り下げ不足だったりフィクサービームとかいうチートビームありきというのもあるので正直認めたくない所もあったが『グリッドマン ユニバース』見てから、もう全てヨシ。となってしまった。
『SSSS.DYNAZENON』はより普遍的な学園モノでキャラクター作りが上手いから魅力的に見えるし推しが出来るタイプのアニメである。会話の間だったり初対面同士のシュールな空気感だったり、キャラクターがちゃんと等身大のセリフや仕草をしているので、なんてことない普通の会話をしている中にアドリブのような偶発的な面白さがあるのも魅力だった。
『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』の予習は必須だしそれぞれ1周しかしてないニワカの意見だが、そのハードルを超えてくる快楽が『グリッドマン ユニバース』にはある。しかしその一方で逆にそれ以外に何があるのかと言われると困ってしまうような作品でもあるのは確かで『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のようなマルチバースモノが直近にあったというのもあるし、学園恋愛モノとしても王道で会話は基本的にストーリーを進めていく役割でしかなく若干疲れてしまう。それこそマルチバースが絡んでくるから説明しなくてはいけないのは分かるけど全部言葉にしなくてもいいのではと思う一方で、でも思い返してみればグリッドマンシリーズは“声に出して伝える”ということの大切さを伝えてきたシリーズでもあり、今作でもそれを学園恋愛モノとしてしっかり機能させたラストという構造も上手い。そして最後には映画という虚構に助けられてきた身として認めざるを得ないグリッドマンの言葉で締め括られることになる。あのたった一言で『グリッドマン ユニバース』を見ている我々観客全員を丸ごと優しさで包み込んでしまうのだ。優しさの器のデカさに白旗を上げるしかない。人間讃歌だ。
