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HiGH&LOW THE WORST Xの炒飯のネタバレレビュー・内容・結末

HiGH&LOW THE WORST X(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

シリーズファンとして鑑賞前は不安もあったが、結論、試写会から帰ってすぐさまムビチケ10枚購入した。
不満といえば辻・芝マンとバラ商のアクションがカットされたことくらいで、それがなければ5.0つけているところだった。

相変わらず演技・映像・劇伴のマッチ具合が素晴らしく、120分の間ほぼ常にマッサージを受けて血流が良くなるような気持ち良さを味わい続けて完全に中毒になってしまった。
特に挿入歌の使い方はシリーズでも白眉。後半の展開に合わせた各勢力テーマ畳み掛け〜クライマックスのStand by youまで、一曲一曲が主題歌を張れるレベルのキラーチューンを惜しみなく投入し、演者の演技とアクションもそれに負けることなくシンクロしていてある種ミュージカルのような趣すらある。

アクション自体の満足度も非常に高く、体感で120分中100分くらいは殴り合っている。
後半のメインバトルは前回の攻城戦を発展させたような、今回は更に内部に侵入してからの「ダンジョン攻略」ともいえる展開。高校生の喧嘩でダンジョン攻略って何?という感じだがそれでこそハイロー。狭い廊下ならではのカメラアングルと様々なギミックが見所で、コロナ禍で制限の多い中よく工夫してこれだけのものを撮ってくれたと思う。

ストーリーについても高校生同士の抗争のみにフォーカスしたこととキャラ立ての異常な巧さによって、大量のキャラをしれっと捌ききっておりごちゃついた点が一切ない。
初見では脚本の完成度という意味では正直、前作よりも劣るかと思ったが、改めて劇場で2回目以降観てみるとシンプルな筋書きの中で後の展開への前振りや文脈の重ね方など、実に丁寧な描写群で構成されていることに気付き印象が変わった。
例えば具体的には、前半での楓士雄がラオウと友達になるというくだり。
後半でラオウ一派が参戦するための単純かつ効果的な動線作りとして機能しているのは勿論だが、この「友達になってくれ」は須嵜の天下井への同じ台詞にもかかってくる。天下井は直にリアクションが描写されることで、ラオウはたったそれだけを理由に駆けつけてくれたことで(また相棒であるマーシーの口から「生まれて初めてだった、喜んでいた」と語られることで)、混じり気のない「友達になってくれ」が如何に心に響いたかを示す相互補完を果たしている。
他にもシダケンの何気ない金欠発言が、三校連合への誘いを断る動機が「金に困っていないから」などではないことを強調していたり、司の気迫や仲間への信頼に思うところのあった須嵜がクライマックスでは司と同じ「まだ終わってねえよ」という台詞を吐いて奮い立ったりと、枚挙にいとまがない。

他に個人的に良かったところは、まず主人公・楓士雄の相棒でありながら前作ではスポットが当たらなかった司の扱い。
喧嘩でもそれ以外でも頭脳派らしいクレバーな立ち回りと、ヤンキーらしい不屈の闘争心の両方を見せながら、その在り方で天下井&須嵜と楓士雄&司の対比を描き、MVPといえる立ち回りだった。
もう一つはなんといっても鈴蘭。えっ今回は鈴蘭がライバルじゃないの?と思わせてからの、ある意味一番美味しいポジションでの参戦。
鳴り物入りで登場したラオウが期待以上の男だったのは勿論のこと(三上ヘンリー大智さんのファンになってしまった)、司と通じるNo.2キャラであるマーシーの存在感と異様な「クローズのキャラっぽさ」にやられた。
マーシー以外のラオウ一派は「ハイロー産の鈴蘭キャラ」の趣だが、マーシー1人で100人分くらいの「鈴蘭っぽさ」を担保している。鳳仙におけるサバカンを更に重要ポジションに置いたような感じ。
一枚岩の鳳仙と違い鈴蘭は派閥が割れてピリついているところも原作通りで、スピンオフどころか鈴蘭メインの続編をもう一本作れる。武装戦線とかも出してさあ。作ってくださいお願いします。マジで。
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