個人的に前2作ほどには刺さらなかったものの、また違った味わいの意欲作であると思う。
震災というセンシティブな題材に対しても誠実な向き合い方をしていると感じられた。
ただその分、前2作ではあくまで舞台装置に近かった天災という要素や、それを引き起こす怪異に立ち向かう派手なアクションとエフェクトの少年漫画的な趣が強く出たことで、前作までのようなエモーショナルなラブストーリーとしてのインパクトは薄れている。
ED以外にRADWIMPSの挿入歌が使われなかったのもその一因と思われ、あの美麗な作画とエモい演出に合わせた曲の力でぶん殴られる感覚が好きだった身としては少し寂しい。（EDの曲自体は今までの新海×RAD曲で一番好き）
キャラクター描写という面では、心身が強く行動的なヒロイン（主人公）も相手役の美男子（役割的にはこちらが実質ヒロイン）も好印象。脇を飾る叔母や友人の存在も良かった。
また今作では悪意のあるモブや脇役がほぼ登場しないことも大きく、善人ばかりと出会って進んでいくロードムービーとしても気持ちよく観られた。
前半のコミカルでハートウォーミングな珍道中with椅子のパートが一番面白く感じたが、せっかくの新海作品随一の美男が早々に椅子になってしまうのは痛し痒しかも。
