鹿shika

サバカン SABAKANの鹿shikaのレビュー・感想・評価

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)
3.7
僕は、サバの缶詰を見ると思い出す少年がいる。小学生の頃のクラスの同級生のタケちゃんだ。タケちゃんは、家が貧しく、いつも同じランニングシャツを着て、消しゴムは唾で、机に海洋生物をひたすら描いて、クラスから浮いていた。そんなタケちゃんとの夏休みを描く。

邦画ってどこかドロッとして、陰湿な雰囲気のものが多い中で、こんなに平和で優しくて、穏やかな映画は数億年ぶりに見たよ〜!!癒された〜!!
クラスの中って今考えるととても小さい世界なのに、当時その中に入っていると、その世界が全てだったよな。
小学生の頃は、1軍なんて言葉は無かったけど、
足が速い子や、声が大きい子がクラスの中心に居て、その子達と友達じゃないと少し浮く存在になったり。
友達を選べない場面が多々ある。
そんな中で、イジられても、負けずに言い返せるし、無視できるタケちゃんはかっこよく思えた。

タケちゃんがヒサちゃんを誘った理由は、タケちゃんのボロい家をクラスメイトとからかいに行ったときに「お前だけは笑わなかったから」という理由だった。
でも、きっと毎日自分の事をからかう集団の中に常に居ても、ヒサちゃんは普段から笑ったりしてなかったのを教室の中で見て「この子は違う」と薄々感じていたんだろう。

私もたまに「この人と合いそうだな」って初対面で直感に感じる人もいるし、
タケちゃんとヒサちゃんはお互いに感じていたのではないかな?

タケちゃんが初めてヒサちゃんを誘ったときは、どんな心境だったんだろう?
何を言われても、あっけらかんとしているタケちゃんでも、とても勇気を出して誘ったのかな。とあの無愛想な態度で少し感じたりして、とっても愛おしかった。

ヒサちゃんの両親は、母親の方が威厳があるが、父親の存在がとても大きく感じ取れた。
朝早くから、親に内緒で出発するときに父親にバレるシーンがあるが、
あの場面の父親は、父親というより共犯の同士の様に感じた。悪い事を教えてくれる先輩みたいな。
こういう危ない事を、ダメと言わない親の存在って、子ども達の中では大人になっても自分の中で良い存在で、
子供たちにとって、そんな悪い大人になりたいな。とも思わせてくれる。
でもそんな父親でも、送り出すときには親の威厳を感じた。
ヒサちゃんの両親のバランスが本当に心地良い。

ラストの終わり方も爽やかで。
古いカセットテープのガサガサした音質の悪さが懐かしく心地良い、みたいな映画。

私も小学生の時の親友マリアちゃんと危ない遊びばかりしていて、親やマンションの管理人さんに怒られたりしていた記憶が蘇ってきた。
今でも仲良いので、その子に会いたくなった。その怒られた思い出話を会うたびにするのが1番楽しいな。と思ってる。
鹿shika

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