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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのloomerのレビュー・感想・評価

4.5
楽しかった!
ポップカルチャーの洪水のような映画と見せかけて、家族の話だったり、映画にまつわる人々の話でもあって、いくつも語る切り口がある作品だった。映画の映画、最近本当にたくさん公開されている。この作品に出演するキー・ホイ・クァンのバックグラウンドや、この映画による喜ばしい影響も併せて見るとエモさが増し増しになってしまう。

友人二人と一緒に見たら、集中して脳が疲れたのか見終わった後三人とも猛烈な空腹感に苛まれて思わず笑ってしまった。そのぐらい情報量が多かった。
これはあれが元ネタなのかしらとゆっくり考える暇もないぐらい忙しなく場面が切り替わるんだけど、見ていて混乱しないしアクションも見やすいのは交通整理の名人ことルッソ兄弟のおかげなんだろうか。
ミシェル・ヨー扮するエブリンがカンフーを習得してからのしなやかで美しいアクションは「待ってました!」と言いたくなるぐらいの楽しさだった。

ストーリーについては凡庸と捉える向きもあるけれど、家族のあり方を誠実かつ気持ちが明るくなるような形で着地させてくれたことがわたしは嬉しかった。誰もが誰かの子どもであり、その子どもが大きくなって自らも子を持つという世代の連鎖の中で、時には関係が呪縛のような形になったり衝突することもある。そんな時にどうすれば…という問いに提示される答えが素朴ながらも心に沁みた。

また、パンフレットに載っていた監督のダニエルズのコメントが最高。「本作は僕たちなりの「マトリックス」へのアンサーだ 「マトリックス」に始まり「マグノリア」で終わるような映画を作りたかった」。わたしも「マグノリア」、大好きだよ。なんだか一気にダニエルズのファンになってしまった。次作が楽しみ!

「花様年華」オマージュの「彼」を見た瞬間フゥ〜〜!と声をあげたくなる素敵さだったこと、この先何度も思い出すと思う。
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