OUTTOLUNCH

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのOUTTOLUNCHのレビュー・感想・評価

4.2
「最先端のカオス」というキャッチコピーはなかなか言い得て妙だなと。

ほとんど監督たちの悪ふざけとも見える独特の笑いのセンスは好き嫌いが別れそう(個人的には好き)だが、目まぐるしく切り替わる映像のテンポ感、マルチバースに散りばめられた様々な映画のオマージュ、キレキレのカンフーアクション、「考えるより感じろ」と言わんばかりの展開は映像体験として楽しい。

色々詰め込み過ぎて終始めちゃくちゃなんだけど、実は真面目に、現代社会における他者に対する「優しさ」とは、異なる価値観に対する「寛容」とは何か。それは、ひょっとしたら逆の立場だったかもしれない自分の可能性に想像し思いを馳せることで、自分以外の他者をありのままに受け入れることができるんじゃないか、っていう問いを、マルチバースというSF的仕掛けを用いながら、我々に投げかけてるように思う。

ネットやSNSの存在によって、自己の欲望と他者の欲望が複雑に同居してアイデンティティクライシスを起こし、いっそ全てを無に着してしまいたいという現代人的やけっぱちメンヘラを、崩壊から救うものは「愛だろ愛」っていうどストレートなメッセージもまた清々しい。
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