ブロオー

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのブロオーのレビュー・感想・評価

3.2
タイトルそのまま。
足し算の美学というか、あれもこれも要素を詰め込んで誰かにどこか引っ掛かればいいのだろうという感じ。この尺でこれだけ詰め込んだんだからスゴいだろうというような感じが出ている気がして苦手、しかも体感時間としてはものすごく長くダレている、ありえない。AKB48とかじゃないんだから、誰にとっても1つ好きなところがあって後は待ち時間とか考えられない。構造としては食べ放題とかサブスクとかいったサービスも近いのだろうが、それならU-NEXTで色んな監督の作品を1つずつ観るという方がいい。
個人的な感覚ではあるが、作品は削ぎ落としてこそという美学の方を支持したい。サブスクとかのプラットホームは全部一個のでかいやつに統一して欲しいですがね。そこは個人的な線引きのライン。
とはいえ、いいところは多い。中国語と英語が入り交じっているのは素晴らしいし、夫が家父長制を体現したような強い人間ではなく、優しさに満ちた人で大事なところで止めに入るところとか、あとはホームビデオ的な映像は特に好きで、子供がコインランドリーの建物内を走り回るところとかね。
やっぱり、映画スターになった世界線のシーンは本当によくて、涙が出そうなくらいだった。しかも、キーホイともアメリカで再会して、あのとき一緒になる決断をしていたらなんてくだりは、本当にいい。どんな世界線に行ったとしても、キーホイのことを好きになる運命だったっていうのはロマンチックだよ。こういうのには弱い。統計学的な必然とかそういうのじゃなくてさ、ハートの話。身分とか地位とか生まれとか、そういったものとは関係なく、その人のことを好きになるってさ、なんとなくちょっとだけ分かるんですよ。好きになった理由が説明できてしまうなら、その要素がなくなったら、好きでいなくなるってことだとは思うし、好きになった理由が分からないという方が、本当に幸福なことだと思う。
別に人間に限った話ではなく、モノとかでもそうだけど、人生やり直しても同じようなものを好きになるんじゃないだろうかというね。だから、どんな状況だろうと、現状の世界線におけるこれまでの選択は間違っていなかったんじゃないかっていう自己肯定感、これだけは思想として譲れないです。
そういうわけで、あまりにも分岐世界を魅力的にかつ大量に詰め込んで見せることに重きを置いているこの作品は、同じような結末であっても、エンターテイメントであって、心に残るような感じではなかったです。
そういえば、友人が地獄巡りの話をしていたが、カイバというアニメの星巡りは好きですね。全く別の価値観の世界を巡ってくるという方が旅行的な楽しみもあって好きですね。
あと、ベッキーは可愛いしめちゃくちゃ好きです。