Marie

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのMarieのレビュー・感想・評価

3.9
狂気染みた映画だった。とんでもなかった。後にも先にも同じものは作れっこない。途方も無くとっ散らかっていて、でも支離滅裂なものをひとつに繋ぎ止められるくらいには芯が通っている。いや、元々ひとつのものを支離滅裂に、バラバラに切り刻んだのかもしれない。…というのは視覚的に繊細ではない私の感覚であって、知覚の特性によっては普段からこれに近い世界が見えている人もいるのかもしれないけれど。ともかく、ピカソのような陳腐からは程遠い手段で、結局は愛なんだという不変の真理を感じさせてくれる。

どのユニバースにも愛着が湧いた。特にお気に入りは指ウインナーのふたり。ふたつ岩のユニバースはSF愛好家としてまさに見たかったものだったし。ウォン・カーウァイ『花様年華』を思わせるシーンもあった。
登場人物がマルチバースを渡り歩いてるので、皆キャラクターが定まらない印象を受けるのだけど(俳優にとっては厄介だったろうなぁ)、ただひとりウェイモンドだけは一貫して「優しく忍耐強い」性質を持っているのが面白かった。これは製作側も意図していたのか、ただ各俳優が各ユニバースの各キャラを真摯に演じただけなのか、興味ある。
Marie

Marie