狩野義弘

すずめの戸締まりの狩野義弘のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.0
20230103文末に追記
テーマ性、作画技術、演技、音楽と全てにおいてハイクオリティな作品。
自分は、そこそこ新海作品のファンなので、マクドナルドで初めて自分の為にハッピーセット(すずめといす)を買ってから鑑賞に臨みました。
今回は仕事関係で事前にVideoコンテを拝見する機会を得ていましたので、答え合わせ感覚での鑑賞となりました。初見だけど初見じゃない奇妙な感覚で、そのくらいVideoコンテが作り込まれていて、新海監督の1人演技(一部お子さんのパートもあり)なのに全編楽しめるレベルで驚きました。
このレベルのVideoコンテであれば制作に入る前からどういう結果が出るか関係者も想像できるでしょうし、アニメーターや美術の方はもちろん、演者も監督の意図をかなりのレベルで汲み取れると思いました。それらの仕上がりレベルが高いのもVideoコンテで既に作り込まれているものにスタッフ各々が上乗せする事で出来上がっているのだと思います。(スタッフ各々のレベルが高いのも勿論ですが)

エヴァとかで最近有名になったプレビズって奴に近いですが、皆さんご存じのとおり新海さんはそれこそ一人でアニメ作るところから積み上げて来て今日があるわけで、その延長線上のVideoコンテな訳で、大作である近三作品も新海さんのパーソナルフィルムという感触なのも納得です。

震災について描くことに関しては賛否両論あり個人的にはなんとも言えませんが、「世界がどうなっても僕たちは大丈夫」という前作の少々受け身的な内容から、「わたしたちが生きてゆく世界がどうか輝かしいものであってほしい」という希望的なものになっているのは良かったです。

人の耳目を集めるのには刺激的なテーマとか打ち出した方が効率的ですし、大きな作品にしないとここまでのクオリティ追求はできないと思いますし、そういう意味ではプロデューサーは狡いレベルで上手くやったと思います。

と、ここまで書いてなんですが、前二作品で感じたハッっとさせられる絵があまり感じられず、美しいとされる草太さんもマイルドに見えましたし、音楽含め、全体に尖りが少ない様に調整されている様に見え、新海誠レンズを通した見慣れているけど見たことない景色を期待していた自分としては少々物足りなく感じてしまいました。(Videoコンテ見てしまったことが影響してるのかもしれませんね)

Videoコンテの答え合わせとしては、山本五十六のやってみせを実践している監督手法な訳で、監督の意図が細部にまで行き渡ったフィルムになっていると思われ、今のところ新海さん以外は採らない手法で、そりゃ独特な仕上がりになるよねって、理解できました。

ポスト○○とか、ポリコレとかどうでもいいので、状況とか、環境とか、立場とかに影響されないところで作られた今の新海誠の新作が見てみたいと思いました。

追記
色々な感想を見て、自分の中の違和感がわかってくるとともに作品評価が下がりつつあります。
やっぱり ただしイケメンに限る! という内容と ダイジンがナマゴロシになっているのはどうなのか?! というところです。

新海氏は個人作家らしく、もっと日常の話だけでやった方が良いのではと思います。
他の人はあまり経験のない個人創作と集団創作の違いとかそこでモヤモヤしたところを表現していただければ、新海誠さんのことをもっと理解できるのではとか思ったりしております。