かまぼこ権八郎

すずめの戸締まりのかまぼこ権八郎のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
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3.11を直接題材にして、さらにメインターゲットに被災者を見据え、エンタメ大作としても成立させよう、という非常にチャレンジングな作品。

なので、求めている人の場所にちゃんと届けば、それで良いのだと思います。

東日本大震災以降、監督が「君の名は」「天気の子」を経てこの作品にたどり着くまでの過程がロードムービーになっている様に感じ、成功を収め、順風満帆かの様に見える監督の感情が吐露されているようで興味深いものがありました。

自分がいかに戦い、生きて来たのかを見せることはもちろん必要ですが、個人的にはもっとしっかり「喪失」を描いても良かったのではないかと思います。


「草太さんが居ない世界を生きるのが怖い」

ではなく

「草太が居ない世界をどう受け止めて生きるのか」

を観せて欲しかった。

母親を失った鈴芽がどうやって絶望の淵から抜け出し、今の彼女になったのか、必要なのその具体的な描写のように思います。(ラストの邂逅だけでは足りないように感じました)

それなくして、圧倒的で理不尽な死を体験した世の中を前にして「それでも君には立ち上がる力があるから、未来を恐れないで」と伝えることは難しいのではないでしょうか。