Nick

すずめの戸締まりのNickのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

事前情報あまり入れずに観た!
明日に向かうエネルギーが詰まっていた!

本当に怖いことは誰かと手を取り合い生きていくのを忘れてしまうことだなと。


やはりというか流石の映像美!
思っていた以上に直接的な表現で、「君の名は。」「天気の子」以上に描きたいテーマで殴ってくる感じは、もしかするとその2作と比べるとエンターテイメントとしてキャッチーさが削がれているのかもだけどやっぱり絵が美麗なので強い!
ファンタジー要素が結構モリモリにこれでもかという詰め込まれ方をされてる様に見えたのはこの際あまり気にしないことにします。いい面も悪い面もきりがないので。ただダイジン周りの設定は消化不良だったことはまぁまぁ引っかかってます。


良くも悪くもその過去2作からはキメェ(!)感じが増されてるのもあって、ぞわぞわする感覚も多分にあった。作家性の強調なのでしょうか?キャラの言動とか設定のキモさは何だったのか…。絵と声におけるキャラ演技だったりはめちゃくちゃ良かった!
「エモーショナル」に振り切れた前作と比較するとファンタジーのようでいて(特に後半が)かなりロジカルだったように思う。

ロードムービー的なのは楽しかった。
主人公の出自で向き合ったのは一つあるけど、段階として“夜の神戸”がある種1番決定的にこの作品が向いている方向を教えてくれますよね。

ただ物語のアップダウンが激しく、要所が割と細かくバラけていたのもあってか、物語の要や見所がどこで何なのかが分かりづらい感は正直強かった。キャッチーさというか前2つと比べたときに弱さを感じる1番の理由になり得るかなと。表現が直接的だからこそ、この部分がぼやけると難しい感。
作品を通じて感じたものの方向性に対して自分は肯定的な意味で共感したけど、描き方にしてはそこへの心の振れ幅が小さかったなあと思う。肌で感じた熱量に対して自分の中に残るものが少し物足りなかったというか。映像美もあって全体の体験としては最高だったのだけど、どこか空を切る感じ。

それとこれが1番言いたいことかもだけど、全体通して話のスピード感的にも内容量的にも2時間1本でというより連続ドラマ・アニメ的な体験をしてみたかったというか。特にロードムービー前半!全体でも1クールアニメ行ける!(作画はヤバそうだけど)
最近だと「シン・ウルトラマン」でも近いものを感じた気がする(まぁあそこまでパート毎に別物感は流石に無かったけどそもそもあれは逆に元が連続ドラマですし)。

てかやってる内容は「シン・ゴジラ」寄りな気がしなくもないけど。でもそういう点ではそれがどこまで上手くいっているのかとは全く別に、実写ではある程度これまでにもあった震災を描くというコトを、いくらでもファンタジーに置き換え可能なアニメ作品で挑戦しているのは凄いし、作家としてカッコいいよね。

宮城の沿岸部は自分があの日から3年経った頃に訪れた時と今もあまり変わってないんだなぁ…と改めて。
自分は11年前は揺れこそあれど関東にもいなくて全く被害がない(何ならその翌日あたりに余震とは別の強い揺れがあった)地域に住んでいたけど、その時の記憶はしっかりある世代だし、あの半年前に石巻を訪れていて震災の前後を直接自分の目で見ていたということもある。もっと言えばあの日より前に大きな地震にあって恐怖を感じていた。

でも、もう11年前を直接的に知らない人たちがこれからどんどん増えてくるのは確定してるし、そういう意味でも「すずめの戸締まり」は明日を生きる人たちのための作品なのだと思う。
だからすずめと同世代、そしてそれより下の世代の人たちの感想が実は1番気になるかも。


あとは音楽!全編通して最高!サントラ聴きながら帰っている!またRADWIMPSのMVかと思っていたら違いました!そういう意味でも「君の名は。」以前のテイスト寄りなのかしら?とにかく良かった!「キャットチェース」良き!
Nick

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