Tanokami

すずめの戸締まりのTanokamiのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
5.0
「あなたはちゃんと大きくなる」
「わたしはあなたの明日」

宮崎の田舎の女子高生が廃墟にある扉を開けたら、3本脚の椅子にさせられちゃったイケメンと、変な猫を追いかけながら、各地の廃墟の扉を閉める旅をすることになっちゃった〜

という突拍子もないストーリーではあるもののとんでもなく奥深く、死生観への問いを突きつけられて、前情報なしに観に行ってかなり喰らった。

まず面白いなと思ったのが新海誠特有の民俗学や日本神話的なアプローチで、天岩戸伝説で岩戸を開けたアメノウズメをモチーフに、後ろ戸を開けたのが岩戸鈴芽といったところ。仏教において後ろ戸は死後の世界でもあて、そこに迷い込んでいるのが小さい頃の震災孤児である鈴芽であると...

そして震災やパンデミックを経ての人々の意識や社会的な変化、それと対比するそれ以前にあったはずの懐かしい感覚を覚えるシーンがいくつも散りばめられていて芸の細かさも感じる。

「大事なものなんだけど時間が経つとその存在を忘れてしまうもの」としての三本脚の手作り椅子がいいメタファーになっていて、その椅子=草太がどんどん大事な存在となっていくというのも対になっていて絶妙。

鑑賞してからちょっと時間を置いて、パンフレット読み込んで反芻しながらレビューを書いていて「自分で自分を救う話」という新海誠監督の現実的すぎるけどかなり納得感のいく言葉で腑に落ちました。いい作品だった。
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