メモ魔

夏へのトンネル、さよならの出口のメモ魔のレビュー・感想・評価

3.4
夏へのトンネルさよならの出口

エンディングeill[フィナーレ]が本当にいい曲。
【全て放っても私はあなたのいる世界が幸せ。】
映画で伝えたいメッセージを歌詞で上手く掬ってるなと思った。

まず良かったシーン。
妹の【いってらっしゃい】
ここは感動した。もう会えないとわかってる人からの行ってらっしゃいを背中だけで受け止めた主人公に深い決意を感じる。

以下、批評になります、、、

曲から映画に入ったのはこれが初めて。
歌う時の感情移入に使えたら良いな位で見たんだけど。、、

結論から行くと3.4点。本筋自体は悪くないのに細かい部分に造りの荒さを感じる。
83分って事で時間的制約もあったんだろうが、中途半端に出す位なら40分の短編映画にして切る所は思いっきり切った方が良いんじゃないかと思った。
この映画で監督が視聴者に伝えたい筋が見えなかった。

お父さんがただただ良くないキャラとして使われてしまったのが惜しい。
勝手に奥さん候補をを連れてきたりとなんでもあり状態。
ここまで壊れてしまった理由と、それでも前に進まなくてはいけない理由をしっかり本人に言わせるべきだったと思う。

自分がこの映画を心にスッと通せなかったのは、お互いの傷、というか心の穴を埋める為にお互いを使うような。そんな共依存の関係を見せられたように感じてしまったからだと思う。お互いが自立してて、自分に足りてる物と足りていない物を認識して、その上でこの人と【ずっとそばにいたい】と思える。そうやって恋愛が構築されていく過程が無いと、今回の映画みたいに相手の傷の深さを知ることで惹き寄せられるようなそんな描写は好きくない。2人だけの秘密を持ってる事の優越感で進んでいく恋に見えてしまった。

あとは妹が大人すぎた。あの歳で他人の幸せまで口にできる子はそうそういない。妹についてももっと掘って欲しかった。何で妹は自分の笑顔のみならず、他人の笑顔までを望むようになったのか。人が笑顔でいられない時の辛さをどうやって知ったのか。そしてそれを解決する為に何故笑顔である事を選んだのか。そこが劇中で述べられてないから、このままだと【あ、妹さんっていい子なんだなあ。】位の認識になっちゃう。この歳頃の女の子が良い子してる訳ないし、そこのギャップが受け入れられなかった。

どれだけ笑顔でも、そしてどれだけ嫌味な人でも、それぞれにその行動に移る理由があり、それを紐解けば分かり合えない人などいない。
アニメのキャラは、作品で監督が伝えたいメッセージの代弁者だ。だからそのキャラの背景は必ず知っておかなくてはならない。何でこのセリフを吐くのか、何でこの行動に移ったのか。その背景を視聴者が辿れるように。
この作品はそれがしづらい。というかまずできない程にキャラの背景が見えなかった。

親父に【妹の代わりにお前が死ねばよかった】って言われて、のこのこ命を差し出してしまう主人公の心情理解がしづらかった。
心の底では【家族でまた幸せに、、】を願っていたから、妹の為に命を投げ出した主人公の気持ちまでは分かる。でもその家族に自分はいるの?って。その矛盾と葛藤までを描いて欲しかった。
そこでグッと留まって、妹に【お兄ちゃんはお兄ちゃんの幸せの為に生きて良い】そうやって言ってもらえたら、主人公も胸を張って家の敷居をでられたはずなのだ。
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