ひでぞう

恋のエチュード 完全版のひでぞうのレビュー・感想・評価

恋のエチュード 完全版(1971年製作の映画)
4.7
実生活と映画のなかの時間は全く異なっている。わかってはいても、映画には現実生活以上のテンポと、速さを求めてしまう。人生を描くにしても、シーンから次のシーンへと一挙に時間が過ぎることに疑問に感じない。しかし、本当に素晴らしい映画は、ゆったりと、実生活以上に、豊穣な時間が流れる。恋のエチュードに流れる時間がそれだ。三人のイギリスでの時間は、おそらくは彼らが幾度も振り返り、懐かしみ、再び甦るものだ。それゆえに、ミュリエルは、気の遠くなる時間を一人でも過ごすことができたのだ。ラストシーンでの彼女の告白は胸をうつ(ステーシー・テンデターの畢生の演技だ)。彼女のピューリタンとしての潔癖な姿と、『突然炎のごとく』でのカトリーヌ(ジャンヌ・モロー)の奔放な姿は、対照的にみえて、ミューズとしての「女性」像としては相通じるものがある。最後に、クロードがかつての豊穣な時間を想起する。まさに、これが人生だ(C'est la vie)。
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