柳下美恵さんのピアノ生演奏と共に鑑賞しました。
まず、館内が暗くなりサイレント映画のボワっとした明かりの中、ポロンと聴こえてくるピアノの音というその体験に感動して泣いてしまいました…笑
同じ映画を今まさに共有している人がその映画に合わせて音楽を奏でている。映画を観て、それを聴いている。満たされました。
アフタートークで当時は映写技師の人が手回しで映画を上映していてスピードもライブで変わったという話もありましたが、そもそも映画とはそこにいる人達で一緒に楽しむものだったのだと。それを100年近く後、私達もまた同じように楽しんでいるのだと
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さて、作品の内容ですがこれまたすこぶる面白い。ルネ・クレールは天才です。
3人の男と1人の女の関係を、花束の受け渡しでめまぐるしく展開させ、観客の笑いを次々と誘い、実際に100年後の異国の観席の子どもも老人も声をあげて笑わせてしまうのだからこんなすごいことはありません。
ロマンス、コメディ、アクション、ファンタジー、サスペンス、ホラー…今の視点で見れば色んなジャンルの垣根を自由に軽やかに飛び越えるように見えますが、映画とはそもそもその全てを持っていたのだと感じさせられます。
森の中の花畑、1人歩く老婆を花畑の中から1人、木の上から1人、不意に現れた男が襲いかかる驚き。
人間が犬やネズミに変わってしまって繰り広げられる鬼ごっこ。池を泳ぐネズミ!池に落ちたかと思うとなぜかパンツ一丁で謎の力で飛び出してくる男二人、謎のワニみたいな怪物。追いかける黒猫はきぐるみを着た人ってなんて自由な表現なんでしょうか…!
蝋人形の館でホラーに変わる転調も素晴らしく、ちゃんと怖いし、ギロチンブルドッグはスリリングで手に汗握る。
ノートルダム大聖堂で本当にロケをしたというハラハラ・ドキドキのアクションシーンまであるのだから本当に満ち足りています。
映画の喜びに大感動です。