ボギーパパ

エンパイア・オブ・ライトのボギーパパのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
3.7
劇場2023-17 TCサクラマチ

『007 スカイフォール』『同 スペクター』『1917』の監督、サム・メンデス監督作品。

今年は『エンドロールのつづき』『BABYLON』『フェイブルマンズ』と映画愛に満ち満ちた作品ラインナップが続く。コロナ禍の制作ということもあって、製作自体が困難になった影響を受け、監督の映画、映画館への愛が込められた作品が多いのは必然なのか、、、本作は映画館を舞台に繰り広げられる人間模様を描いたもの。

ファーストカットから、あっ映画館なのねと瞬間でわかるカットから始まり、映画館愛溢れるカットの連続で、この物語の舞台と時代を簡潔に説明している。大変オシャレなカットの連続。
1981年、イギリスの南岸の街マーゲイトの映画館。海沿いの映画館、なんで素敵なのでしょう。

そこに現れるは、だいぶ疲れた感じの、やや影のある中年女性ヒラリー。本作はヒラリーを演じるオリヴィア・コールマンの演技を見るだけで満足できる作品に仕上がっている。

彼女の一挙手一投足、ほんのちょっと動かしただけの表情で、全ての場面を転換させるくらいの変化が現れる。これぞアカデミー俳優の実力か、、、凄い!凄すぎる!もうこれを観るだけで十分。『LOST DAUGHTER』も凄かったが、眉を動かすだけで感情の全てを動かせるのか、、、

ヒラリーの置かれた弱く脆い環境に、それを支配するが如き存在。それへの抗い。
一方ひょんなことから心を通い合わせるものとの出会い、弱い立場同士引きつけられるものの、、、

この時代、とは言ってもほんの40数年前、現代社会にも悪い意味で引き継いでしまっているが、差別と偏見が社会に渦巻く。
そこに経済の停滞、強引な政治が人の中にある狂気を引き出し、うねりを起こす。物語はクライマックスへ、、、

映画館の内側と、外側に「分断」があるような表現と感じることができた。内側には心のオアシスがあり、外側には現実社会、それもとびきりシビアな、醜い社会が。

しかし外の世界も平常時は美しい。マーゲイトの海や街並み、花火も含めて。

オリヴィア・コールマン他俳優陣が素晴らしい作品でした。コリン・ファースのゲスっぷりも最高でした(^^)

トビー・ジョーンズさん、お久しぶりです。
『ミスト』以来大ファンです!ファイ現象のご説明ありがとうございます。エンドロールのつづきでもあった映画愛、映写室愛ですねー。デジタルとは異なる味のある世界!
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