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TAR/ターのnoborushのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
TÁR 2022年作品
8/10
トッド・フィールド監督脚本
ケイト・ブランシェット ノエミ・メルラン ニーナ・ホス
マーク・ストロング
EGOT winnersで音楽界の頂点に君臨したリディア・ター(ブランシェット)は
ベルリンフィルの首席指揮者としてマーラ交響曲のサイクル達成のために
のこされた最後の大作交響曲第5番のライブレコーディングを控えていた。
しかし慢心から、第二指揮者の交代や、気に入った女性チェロ奏者をオケに入団させ、
特別扱い、ジュリアードの生徒へのパワハラ等々で積み上げてきた地位が
音を立てて崩れ落ちていく。
まず主人公は女性で自虐的にU-Haul lesbianと自称する人物
(コンミスを彼女にして、女性秘書に指揮者の地位を約束している
(秘書役はノエミ・メルラン「燃ゆる女の肖像」))で、現在において
同性愛、女性というのはポリコレカードとして強い。
多様性からこうした人物がボリコレから社会の上位になりやすくはなっていると思う。
ただ政治家でも英国のリズ・トラスやフィンランドのサンナ・マリンの様に能力の
無い人でものし上がれるようになってしまっている。
本作の主人公はそうしたレッテル貼りを強みにしておきながら、ジュリアードの生徒が
自分のアイデンティティがバッハと合わないという考え、レッテルへのこだわりを
批判する矛盾した言動がみられる。
ポリコレでのし上がった人間もポリコレで叩かれる。
本作で言及されるシャルル・デュトワのセクハラ、ジェームズ・レヴァイン の
少年に対するセクハラのように彼女もセクハラやパラハラで地位を失う。
単なるポリコレからさらに突き進めた深い考察のある作品だと思う。
2時間30分が全く無駄ないシーンばかりで目が離せない。
クラシックにソコソコ興味があれば台詞の一つ一つも興味深いし
ベルリン・フィルハーモニーも行きたくなる。
ケイト・ブランシェットについて今更言うことは何もないが、なんとなく
お高くとまった人物がおかしくなっていくのを本当にリアルに演じているし、
ラストもなんか救われる。
「ブルージャスミン」とともに観ておきたい一本。
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