もんてすQ

TAR/ターのもんてすQのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
女性指揮者としての高みに登りつめた女の苦悩と運命を描いたドラマ
指揮者ってどれだけ凄いのか分かんなかったけど、ああやってホールのライティングや録音までしっかり口を出すのは知らなかった(そこのところをみっちり細かく描写しているのでストーリーにリアリティがあった)

別にケイト・ブランシェットそんなに好きじゃなかったけどこれは度肝を抜かれるレベルの演技だったと思う
ドイツ語をやって、指揮をやって、ピアノをやって、ゴチャゴチャした音楽用語の超長尺のセリフを頭に入れる...凄すぎる
冒頭で主人公がどれだけ凄い人なのかが語られるんだけど「確かにこの人凄いんだろうな」というのを観る側に納得させることに成功している
ケイトのベストアクトなのでは

ストーリーに関してはハラスメントというか、人間関係のパワーバランスについての物語だと思った
あらすじを読んだ限りでは主人公はもっと暴君として描かれていると思ったけど、そうでもないところが絶妙
もちろんジュリアードでの授業シーンとかはプロフェッショナルすぎるが故の暴走って感じだけど、別に人間的にダメという程じゃないし
この映画で言いたかった事って、ああいう立場まで行っちゃった人の振る舞いの難しさというか...
主人公を女性(レズビアン)にしていることで更にテーマに重みを持たせていると思う

性癖がヤバい人って表向きは社会的な立場が高い人が多いらしく(ジェーン・フォンダ談)、そういう人の溜め込んだ仕事上のストレスとかが性的に発散されると
主人公リディアも輝かしい経歴を重ねるほど裏で捻れていったものがあったんじゃないか
もちろんそれが正当化できる訳でもないし、当たり前だけど成功者でもモラルを重んじている人はいっぱいいるけれど...
ああいうアートな界隈は実力者は利用して利用されてっていうのが当たり前で、リディアがババを引いてしまった感じがする

超慇懃無礼な新人チェリストと主人公がカフェで会話するシーンでの「うわ何なのコイツ...でもカワイイな〜...」みたいな表情マジウケる
史上最低の畜生ソングをアコーディオンで弾き語りするとこも爆笑

ねじ巻き式のメトロノームって夜中いきなりカチカチ動き出す事があって、確かにアレは怖いよね
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