このレビューはネタバレを含みます
ショーペンハウアーの、雑音が気になるのは知性の証みたいな言葉の引用がめちゃくちゃ効いていると思った。家の外から聞こえてくる誰かのピアノの音や冷蔵庫の通奏低音、貧乏ゆすりやボールペンのノック音など、普通の人ならあまり気にならない音に過敏に反応しているター。ただしそれは知性の証でもあるがターの精神の揺らぎのようにも表現されていた。特にメトロノームなんかはそうだろう。
有害な男性像にも似た権威と傲慢を羽織ったターは次第にキャンセルされていく。
しかしキャンセル後に部屋の窓を開け放って街の雑音に向き合ったことから、結局ターのラストでの境遇が彼女のベストなのではないかとも思う。
正しくないものが失墜したあとに再生できるという示唆がなかなか良い着地であったと思う。