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TAR/ターの2049のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.0
 ケイト・ブランシェット主演、トッド・フィールド監督によるドラマ。

 まず冒頭の講演のシーンの長さに面食らう。会話の中に登場する人物が、現実世界にも存在する、もしくは存在した音楽家やアーティストの名前なのか、もしくは本作の登場人物なのか分からない。この疑問は全編にわたって繰り返され、映画への理解が追いつかない。もちろんクラシック音楽に詳しい方なら理解できるのだろうが。
 この冒頭でとっつきにくい印象を受けた方は最後までその印象は変わらなかったのではないだろうか。

 講義中に男子学生を論破する長回しはケイト・ブランシェットの演技に圧倒される。このシーンでターの主張をどう感じるかで本作の見方が変わってきそう。私は概ねターに同意(言い方や表現は悪いが)。ターをただの支払い的な権力モンスターと見るか、音楽への狂気的な情熱に満ち満ちたアーティストと捉えるか。

 物語の革新部分も明確には語られないのでどうしても難解な印象が最後まで拭えず。彼女が追い詰めたであろう女性の姿が明確に映る場面はワンカットすらない。後ろ姿でそれらしき人物が写り込んでいる程度しか登場しない。
 全編にわたって流れる不穏な空気や、この世の者ならざる気配を感じさせる演出など監督の手腕が見てとれるが、個人的にはあまり楽しめる映画ではなかった。多分私の頭が悪いからだと思う。

 ラストも意見が割れそうだが、私としてはそれでもタクトを振ることをやめないターの狂気的な音楽への情熱を感じたラストだった。
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