TAR/ターの神が意図のネタバレレビュー・内容・結末

カリスマ性とパワハラの境界が曖昧になっていく様は、昨今のビッグモーター事件、ジャニーズの性加害問題、それに伴う山下達郎の発言など、日本社会が抱える現在進行形の諸問題すら内包しているかのように感じた。同時に、つくり手の内面•思想と作品（音楽）の連帯責任性についても思いを巡らさずにいられない。

残念なのは、男性的なレズビアンの女性という主人公の設定。これは作品の鮮度を高める、あるいはテーマをミスリードすることにおいて功を奏しているが、そのためだけにマイノリティをある種のヒールとして描くのはどうかと思う。たとえシス男性が主人公であっても内容に大差はないはずだ。『怪物』の批判にあったように、セクシャリティをギミックとして用いることの危険性を感じた。