ソニア

TAR/ターのソニアのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.5
思ってたより怖かったけど面白かった〜

疲れてる時はシンプルな脚本の映画もいいけど、これくらい些細なクエスチョンマークと共に進む映画も素晴らしい。感覚は「aftersun」に近い。

名実ともに偉大な女性指揮者リディア・ターの音楽にかける情熱にスキャンダラスな私生活と多くの人間の思惑が重なり物語は思いもよらない結末へと導かれる。





<以下ネタバレ>








仕事中心でイライラしながら帰宅し、外には愛人がおり、都合のいい時に都合のいいことを言う。そんなターの圧倒的な家父長感にまず驚く。最初はフェミニズムへの皮肉を描いているのかさえ思った。おそらく嫌悪感を抱く人は少なくないと思う。
だが見ていくうちに、そのような邪な意図ではなく、権力が人を蝕んでいくということは男女共通であるというようなメッセージを感じ、同時に現代のフェミニズム映画なのではないかと思った。
ターは下町出身であることを隠し、ラジオでなまりをとろうと努力するシーンが描かれる。この想像を絶する努力の描写に、女性として成り上がっていくことへの障害が強く現れていると感じた。また、転んで怪我をしたことを男に襲われたと言うシーンや、ランニング中に叫び声を聞くシーン、メトロノームが突然鳴り出すシーンには、ターが潜在的に抱える男性への恐怖を感じた。この叫び声は「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」からそのまんま使ってるらしい。

最後のモンハンで締まるのは面白いし日本国民として嬉しくなった。モンスターを集団で罠をかけたりして狩猟するゲームなわけだが、多くの人の思惑や、自らの凶暴性で狩猟されてしまったターとかけていたとしたら非常にアイロニカルなラストであると感じた。
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