垂直落下式サミング

おんな犯科帳 II 江戸拷問刑罰抄の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
歴史の中に隠れていた遊郭拷問の実態がいま映し出される。外部に漏れることのなかった独特な遊郭諸制度の私刑拷問は残虐を極める!今宵も廓の土蔵に女の叫びが闇を裂く!石原良純主演のエロティック時代劇第二章。
前作が三つの小編からなるオムニバスであったため、一人の女囚とその娘にフォーカスする本作は、よしずみがひとりの女郎に過剰な執着をしているように見えて、倒錯趣味のロリコンっぽくて気持ち悪い。
前作までは、一応は硬派っぽかったが、今作では中盤までちゃんとロクデナシにみえる。仮病でお役目を休んでいたり、たぶん途中から花街通いが楽しくなってきちゃったりしてて、ぜんぜんいい話にみえないから、このはなしどこに向かうんだろうと見続けてしまった。
主人公が、奉行所の上司から怒られるところは、すごくいいですね。令和の僕らは尊敬できる大人に出会えないから困ってるのに、この人は親身になってくれる親代わりみたいな存在じゃないですか。もっと描かれるべきだと思うんだけれど、ちょっとしか出てこないのが残念。
「近頃、生活が乱れておるのではないか?その方に万一のことがあれば、あの世に行ってお父上にあわせる顔がないわい!」と、ちゃんと叱ってくれるエライ先輩なんです。羨ましい。おい、もっと、この人の言うこと聞けよ!よしずみぃ!
よしずみが、相も変わらず真実を知りたいと素性を隠して探り回るせいで、深川の女たちがめちゃめちゃ折檻されるのに、わりとのほほんとしているのが、草の根の世界を知らない二世タレントだなぁって感じ。このダンナの軽薄な偽善っぽいキャラクターが、お坊ちゃんな風体によく似合う。
みどころは、遊女たちの折檻シーン。すごくいい。お気に入りは「ぷりぷり」!吊し上げた身体に棒を叩きつけられる苦悶の表情がナイス、「ひょうたん責め」の絞り出すような悲鳴も、耽美さがある。「滑車責め」は変な風に落ちたら死んじゃいそうだし、「ろうそく責め」は溶けた蝋を垂らすSM方式ではなくて、しっかりと火あぶりだから、ガチすぎて嫌だった。
その他、花街の人間模様にも、解像度の高いフォーカスがあてられる。身請け話をちらつかせて金をたかるヒモ男と、かりそめの夫婦ごっことわかっていながら、ヒモを「おまえさん」と呼び店の金をくすねて貢いでしまう女。花街ってこーなんでしょーってどーろどろ。ホス狂いの病みカワみてえな関係は、昔からあるのねっ。
女郎は夢見ちゃいけないの!?という憐れな叫びや、誰か一人くらい幸せになったっていいはずだろう?という本音にも、オンナたちの身を切るような愚かしさと情念が乗っかっている。苦悶の悲鳴のなかで、この本音がポロっと漏れるから、物語の悲劇性を増している。
そして、大見せ場!待ちに待った時代劇の醍醐味である剣戟アクションシーン。ついにサムライよしずみの殺陣がみられるっ!花街のやくざたちを切り伏せ、最強の敵との戦いに挑む!かっこいい!竹やぶをシュババババっと横移動するカメラワークにしびれるね。