「そこに山があるから」という登山家の名言が嫌いだった。
言語化しきれない目的に命を懸けるなんて、ナンセンスだ。
だけどこの映画を見終わった後に、言語化しきれない、
命を賭してまで駆り立てる「何か」に強く惹かれてしまった。
むしろ言語化できる目的でしか生きれないことが、陳腐に感じられてしまうほどに。
山に魅せられた人間ほど高尚な人間を、今まで見たことがあっただろうか、とすら思わされた。
息をのむ緊張感。自然の美しさと残酷さをありありと示す映像美も素晴らしかった。
「高く、高く、だが、何のために?」
理由などない。他人の結果も関係ない。ある者にとっては、頂きすらも通過点。登り続けるだけ。