実際に起きた殺人事件を基にしたドキュメンタリータッチの劇映画。
ドラマ『LOST』にも出演しているキャストが3人も出ていて、他にもスティーヴ・ブシェミ等の有名俳優が多数。どうして今まで日本で公開されなかったんだろう……。
保守的かつ閉鎖的なララミーの町で起こったマシューという男の殺人事件。彼がゲイであったことは殺人の理由として大いにあり得る話で、今でも性的マイノリティは性的マイノリティであることを理由に暴力を受けやすい環境に置かれている。
マイノリティの属性そのものを非人間化・悪魔化し、規範を逸脱するモンスターとして扱うことで非当事者の恐怖を煽る。ゲイはセックスやHIVのことだけにフォーカスを当てられ、トランス女性はトイレと風呂だけを"問題"だとされる。性欲に性的指向は関係ないし、HIVに性別は関係ないし、公共空間にはそもそも見た目や言動が規範的ではないとされる人は歓迎されないために自然と排除されているのに、モラルパニックによって議論は当事者不在で行われていく。
ララミーの住民たちが犯人2人のことをこの町の住民ではなかったらいい、というシーンがあるけど、こういった相互監視が働く風土の町では弱い立場の人から構造的な不均衡に晒されやすい。
ドキュメンタリータッチにすることで俳優の演技が浮いてしまい、逆にリアリティを損ねている部分はあるものの、包括的な差別禁止法も制定されていない現在の日本からの視点と劇中の環境があまり変わらないように見えるのは本当に絶望的な気持ちになる……。