ぱぴよん

いくえにも。のぱぴよんのネタバレレビュー・内容・結末

いくえにも。(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

いくえにも、普通の家庭を全員で演じ続け、お互いの傷を舐め合い、埋め合っていく家族。四人が求めているものは同じで、でも決して完璧ではない。救われているのは確かだけれど、それがここに存在し続ける限り前身も後退もない。
そんな家族があっても良いじゃないかと四人は思っていて、それは青柳監督自身の気持ちでもある。
それを唯一否定し、掻き乱そうとした人物がいる。
わんこと若い旦那を連れてきたお隣さん。
修平は幼少期、カトリック系の児童養護施設に入っていた。カトリック系なので日曜日には礼拝があること以外は、何処にでもある普通の養護施設だった。けれどそれは表向きの顔で、裏では、報われない孤独な人たち同士をマッチングさせて擬似家族を作らせる斡旋業のようなこともしていた。それは裏の顔であるので、普通の信者であれば知らないこと。でも、黒沢さんは一般的な信者でありながらそれを知り、更にその考え方には反対だった。
修平の父とお隣さんは顔見知りのようであった。恐らく家族を斡旋してもらいに教会へ行った際、たまたま話す機会があったのかもしれない。
そして偶然、阿部家へ出入りする修平の父を見かけた。名字が違うのにどうしてだろう。昔養護施設にいて毎週礼拝に来ていた子どもも阿部家に出入りしている。お隣さんは疑った。どうにかして暴いてやろうと思った。でもそれは悪意からではなくて、信仰している宗教がそんなものに加担しているということが許せなかったのもあるし、そんな家族を可哀想に思い救ってやろうとしていたから。目を覚まさせて、そんな惨めな行為はやめなさいと。現実を見なさいと。だから最初から仕掛けていくことはせずに、お隣さんの優しさで、少しずつ分からせてあげようとして小さな小さな傷を阿部家にいくつか残した。
・毎週土曜日何があるのか聞いた(お隣さんは既に知っている上で敢えて聞いた)
・修平の幼少期の顔と今の修平の顔を見比べ別人であることを確認した
・お二人ともお若いんですね(こんなに大きな子供がいることは変だと言いたい)
・どこかでお会いしませんでしたかと父に聞いた際、「そうですか?僕は〜…」のお芝居が落ち着き払っていて、逆に違和感を覚える。まるで準備していたかのような、多分そう聞いてくるだろうと踏んだ上での発言。それは父も、お隣さんと顔見知りだと認識していたから。
・結婚に反対され、子どももいない。そんな家族でも幸せだとお隣さんは言いたかった。でもそれは母親の口から先に出てきたことで、母親が本当の家族にも焦がれている事を知った。母親がちゃんと普通の感性も持っているのだ、まだ引き剥がせるなあと安心して笑顔になった(ちょっと強引かもです…)
・最後、ガスライティングの影響を一番強く受けている修平に宗教の話をしたのは、これは偶然。修平の様子がおかしくなっていくことに少し不安と罪悪感を覚えたお隣さんは、わざと犬を離したのでは。


以上が私の考察です。
監督の話を聞けば聞くほど、謎が深まったり逆に謎が解けたり。とても興味深い作品でした。できれば、全ての真相を知りたい。青柳監督の解釈を一から十まで全て知りたいです。ぜひまた解説をお願いいたします。
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