ゆうか

いくえにも。のゆうかのネタバレレビュー・内容・結末

いくえにも。(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

初回見た時にメモに書いた感想と考察を。
繰り返し見るとあらゆる細かい部分が特に気になってきたり、自分なりの考察の答え合わせもできるので、この映画の意味や家族のあり方を考察したい人にはとてもオススメの短編映画。
ただし、受け取り方は人それぞれだと思うので、最終的には監督のあらゆる思いやこだわりもすごく聞きたい映画でもある。

以下ネタバレ含む。

ここに出てくる4人の家族は本当の血の繋がりはなく世間でいう一般的な家族ではないのだということがそれぞれ映し出されるシーンや台詞からとてもよくわかる。
この短い中に散りばめられている家族の違和感とひっかかりの数が凄い。
むしろ、そのことがこの短編映画を見入って深みにハマっていく要素にもなっていると思う。

お父さんは何かしらの理由で本当の妻と娘と暮らせない。
お母さんは本当の旦那様と子供を亡くしている。
妹は元々の家庭内暴力?などのトラウマが過去にある。
主人公は、子供の頃に本当のお母さんに捨てられてキリスト教の施設で育った。

そんないびつな家族構成で、途中から家族になろうとしている4人。
だけどふとした瞬間に崩れて壊れてしまう危うい関係性にとても見える。
他人だけど、そこから幸せな家族を作りたくて。本当の家族として生活したくて。
幸せな家族を繰り返し演じることによって、本当の幸せな家族だと思えるよう自分達自身の頭に刷り込んでいくのではないのかな。

毎週土曜日に同じやりとりを、いくえにも。

主人公は既にガスライティングの効果が出ているが、主人公だけがそのような状態になっていて他の3人はまだシラフの状態であるがゆえに違和感が凄く引き出されていて、ストーリーに引き込まれる演出と脚本が凄いと感じる。

そしてこの主人公の本当の家族という思い込みが崩れるキッカケ部分をさりげなく隣人というどこにでもありそうな登場人物の訪問を使って、徐々に崩れ方を登場人物の表情で表し、最終的に主人公の表情と効果音と各カットで一気に不穏な感じに表してる演出も良いなと思う。ここで一気になんかあるって見ながら引き込まれた感じがしてドキドキ見入ってしまった。
このシーンの役者さん達の演技も本当に凄い!

全く私の個人的な解釈だけど、この家族は忘れられない本当の家族がいながらも、そこから一歩踏み出そうと新しい幸せな家族、家庭を築いていこうとしてるのではないか。
同じやり取りをいくえにも繰り返して。
タイトルの最後のピリオドのような「。」があるように、いつか繰り返さなくても本当の家族になって幸せに暮らしてほしいと思う最後だった。

青柳監督の初監督作品、とても興味深かったが、深くて考えさせられる映画を見させてもらったなと少し感動。
今後も機会があればまた別の作品を見たくなった一作目だった。

ゆうかさんの鑑賞した映画