かお

いくえにも。のかおのネタバレレビュー・内容・結末

いくえにも。(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

印象に残った言葉がいくつかあった。

「子供がいなくても、旦那さんと家族じゃないですか。」
「いいじゃない。普通なら。」
「本物の家族になりませんか」


この家族に血の繋がりはなく、深くて重い事情をそれぞれに抱えた四人が「普通」で「本物の家族」を作っている作品だと思った。

以下はこの家族の考察だ。

仏壇があることから、この家は亡くなった旦那さんと暮らしたお母さんの家なのだろう。そして生まれる前の子も亡くしている。
普通の家族を失ってしまったお母さん。

お父さんも、眺めている写真の奥さんと娘を亡くしているのかもしれない。

足にあざのような痕があり、お皿を割ってしまったことに極度な反応を見せる妹。
過去なのか現在もなのかはわからないが、虐待を受けているのだろう。

そして、隣人とのやりとりをきっかけに混乱し、家族を見て「あなたたち、誰ですか」と言うお兄ちゃん。
おそらく、お兄ちゃんは三人に「本物の家族」だと思い込まされているのだろう。

私の想像では、この四人が出会ったのは教会。
礼拝に通うお母さんとお父さん、その教会の児童養護施設で過ごすお兄ちゃんと妹。お兄ちゃんはきっと母親から捨てられ、施設で保護されているのだろう。妹も、虐待から逃れるように施設で保護されているのかもしれない。
そんな四人が、教会の礼拝で出会った。

戸籍上の家族との幸せな時間を過ごすことのできない四人が、何かのきっかけで「本物の家族」となることを決める。
お母さんの提案かもしれないし、四人が自然と惹かれあったのかもしれない。

毎週土曜、お母さんの家に集まって普通の家族の食卓を囲む。でも、普通に慣れておらず、そもそも赤の他人の四人は、ありふれた普通の家族らしい会話を繰り返す。
繰り返すことで、普通で本物の家族だと思い込み、信じようとしている。
特に、幼少期に母親に捨てられたお兄ちゃんに家族の温もりを感じさせようと、三人が強く思い込ませているのではないか。

土曜の夜が明けて日曜になったら、四人で礼拝に行くのかもしれない。その後それぞれの一週間を過ごし、また土曜に集まる。
それを繰り返して家族の幸せを作り上げているのだ。


家族といっても、最初は赤の他人同士が結婚することから始まる。
子どもができると、他人だった二人が父母となり家族が広がっていく。
でも、隣人が言う通り、互いに想い合い共に時間を過ごせば子どもがいなくても家族だ。

隣人の言葉からは、「家族に血の繋がりは関係ない」ということを考えさせられた。
そう、この家族は血の繋がりはないけれど、温かな家族の時間を過ごしている。
「普通」の時間を過ごせないでいた四人が、穏やかな「普通」の時間を過ごすことで幸せを感じる。


そもそも、「普通」とは何なのか、「家族」とは何なのか、を改めて考えさせられる作品だった。

お兄ちゃんの混乱でこの家族が壊れてしまいそうになった時、胸が締め付けられる思いがした。
この四人の幸せな時間が、これからも続いてほしいと思った。
温かいけど、切なくなる作品でした。



翔さんのキャス配信でのヒントも含め、こんな風に思いました!
ヒントなしだと難しかったし、よくわからないところがあまりにも多いので4.5で…
かお

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