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あんたのakrutmのレビュー・感想・評価

あんた(2022年製作の映画)
3.8
WOWOW開局30周年プロジェクトの一環として企画された、俳優たちが監督として短編映画を制作するというアクターズ・ショート・フィルムの第2弾として、千葉雄大が監督・脚本・出演した作品。友人以上だけれど恋人にはなれない男女の関係性の微妙な変化が会話劇を通じて描かれている。

本作は、SSFF&ASIA(ショートショートフィルムフェスティバル&&アジア)2022において主演の伊藤沙莉がベストアクターアワード(ジャパン部門)を受賞するとともに、カナダで開催されたバンフ・ワールド・メディア・フェスティバルの短編作品部門にノミネートされるなど、高い評価を受けている。それもあってか、千葉雄大はアクターズ・ショート・フィルム第4弾において本プロジェクト初となる2作目を監督した。

この前の連休中にNHKをながら見していたところ、光源氏が現代にタイムスリップしてきたというドラマ『いいね!光源氏くん』が目に留まったのだが、そこでの光源氏役の千葉雄大の「まろ感」が素晴らしくて、伊藤沙莉との掛け合いも面白くて、二人の演技がとても印象に残っていた。そんなことがきっかけで本作を見てみたが、なかなかの出来の作品だった。

前述のドラマで共演しただけあって、長回しの会話劇での二人の息がピッタリで、二人の感情の機微がよく伝わってくるし、千葉雄大が演じている男性の性的指向を曖昧にする(とは言ってもゲイであることを暗示しているが)ことで、鑑賞者が自由に解釈を楽しめるような構成になっているのも良い。千葉雄大が光源氏を暗示するような背の高いニット帽を被っていたのもクスッと笑える。さらに、その会話劇をバーのマスター(ママ?)をしている何十年か後の主人公の男性(演じているのは沖田修一監督)が小説として書いたというメタ的な設定になっていて、(何十年か後の)相手の女性が出てくるというラストも趣き深い。その女性を演じたYOUもまさに適役という感じ。

千葉雄大には、ぜひそのうちに長編にも挑戦してほしい。
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