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評決のTPのネタバレレビュー・内容・結末

評決(1982年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

★1985年に続き2回目の鑑賞★

 社会派の巨匠、シドニー・ルメットのキャリア・ハイを過ぎた中期の、地味な作品なのだが、「十二人の怒れる男」「セルピコ」「狼たちの午後」といった名作にも劣らない緊迫感が全編漂う。

 まず、出演者の面々が良い。ポール・ニューマンは本作で俳優としても上手いということが再認識できるし、名脇役ジャック・ウォーデンが旧友の弁護士、ジェームズ・メイソンが対抗する大手弁護士事務所の弁護団長、顔つきからしてミステリアスなシャーロット・ランプリングが素性の不明な女性と、渋すぎる。
 そして、カメラワークでゆったり・じっくりと出演者を映し出し、特に冒頭から度々登場する、萎びたバーの片隅にあるピンボールに興じるアル中の弁護士フランク(ニューマン)の逆光のシーンがカッコよくて、もう最初から、大人のための落ち着いた良い映画だろうという雰囲気が漂っている。

 ストーリーは、本来弁護士とは何のためにいるのか、正義とは何なのかということを主眼とする方向に展開していくのだが、猪突猛進的に進むのではなく、一歩進んで一歩下がるという感じでなかなか一筋縄ではいかないので、全く気を抜けない。

 ただ、裁判上使える証拠がほとんどない中での最後の陪審員の判断は、心情的に弱者が救われる内容を観客が望んでいるのはその通りだが、さすがにこの裁判シーンの結末には疑問符が残る。

 その部分は大きな欠点なのだが、全般的にフランク弁護士がダメなところも持った一人の人間という描き方が魅力的だし、何と言ってもランプリング演じるローラの素性を知った後の二人のやり取りが、近年の映画では絶対ありえないと思われるほどのクールさだし、ラストシーンの余韻はなかなか強烈!!
 70年代後半が少し低迷していた巨匠ルメットの復活の一撃!
TP

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