ゆず

ケイコ 目を澄ませてのゆずのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.0
”才能はないけど人としての器量がいいんです。素直で率直で”

相手と同じ動作をする中で、お互いを感じていくこと。そこに言語とは違う、あるいは見つめ合うこととも違う、コミュニケーションの形がある。それと、古典的なミュージカル映画もヒントになっていて。二人の男女が無言で踊り合うだけで、体を重ねる以上のラブシーンに感じられる、そんなダンスシーンってありますよね。この映画で表現するのは愛ではないけど、ケイコと会長の間にある特別な信頼関係を、二人の全身の動きを捉えることで表現できたら、映画としてきっと面白いだろうと。そういったことから動作のシンクロが、ボクシングを映画としてどう捉えるかの指針になった。

ストラグルしている人たち。感情があって体が動くんじゃなく、体が動くことで感情が生まれているような。自分の好きなことに対して常に誠実でいる人たち。

生きづらさは何かを成し遂げることでは消えないと思うんです。そうではなくてたとえば、コンビネーションミットがうまくいった一瞬の喜びで、なんとか“今”をつないでいくみたいな感覚というか。つまり、情熱は勝負ごとで、はかれるものじゃない。続けることによって情熱を保っていく。

痛い思いをするのにどうしてわざわざ殴り合うんだろう、ということが謎だった。考えてもその答えはわからないが、この問いについて考えていくことは、ぼくら人間はいつか死ぬのになんでわざわざ明日も生きようとするんだろう、という問いと結びつくかもしれないと思った。「答えがなさそうな問い」を見つけた時に、自分なりにどのように考えられるかが、自分の映画を撮るモチベーション

彼女の最大の問題は、プロボクサーになる目標を達成した後、なぜかボクシングを辞めたいと思ってしまうこと。好きなボクシングをどうするか、その問題をケイコがどう突破していくのかが重要。
大きめの環境音。小笠原恵子

移ろい
ゆず

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